多様な生き物を育む水田の価値を見直そうと、今月末から韓国で開かれる湿地の保護に関するラムサール条約の第10回締約国会議で、水田保全に関する初めての決議案を日韓両政府が共同提案することが分かった。近年、国内外で広がり始めた生き物の生息環境に配慮した農業への転換を後押しする狙いがある。
条約の定義する湿地は、野鳥の生息地だけでなく干潟やサンゴ礁など多種多様で、水田も人工の湿地として認められている。今回、日韓が提案する「湿地システムとしての水田の生物多様性の向上」と題する決議案では、水田が食料生産だけでなく、人々の健康や野生動物の生態系を支えていると指摘。各国政府に対し、洪水を防いだり、地域の生態系を守ったり、気候変動を和らげたりする水田がもつ様々な機能について調べ、こうした機能を高めるための農法や水管理を積極的に進めるよう呼びかけている。
国内では、減農薬・減化学肥料に加えて、カエルなど小動物がすみやすいように冬場も田んぼに水を張ったり、周辺に水路をつくったりするなどの試みが広がり始めている。韓国ではこうした活動への取り組みに応じて、政府が農家に直接資金を提供する仕組みも始まっているという。
稲作は少なくとも世界114カ国で行われているとされる。しかし、多くの途上国では、ようやく農薬などの管理への関心が高まってきた段階で、生き物への配慮まではなされていないのが現状という。決議は採択される見通しで、環境NGOなどの関係者は「今回の決議が生物多様性保全型の農業が世界に広まるきっかけになればいい」と期待している。
締約国会議は28日から11月4日まで韓国南部の昌原で開かれる。現在、日本では33カ所の湿地が登録されており、政府は今回、宮城県の化女沼(けじょぬま)、山形県の大山上池・下池、新潟県の瓢湖(ひょうこ)、沖縄県久米島の渓流の4カ所を新たに登録する方針。(須藤大輔)
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<ラムサール条約> 正式名称は「特に水鳥の生息地として国際的に重要な湿地に関する条約」。1971年にイランのラムサールで採択された。条約が保全の対象とする湿地は、湿原だけでなく河川や湖沼、地下水系、干潟、サンゴ礁など鳥の生息地に限らず幅広い。水田や運河など人工的な場所も含まれる。158カ国が参加し、登録湿地は世界で約1800カ所、計約1億6300万ヘクタール(日本の面積の4・3倍)に及ぶ。