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ホッキョクグマ婚活「氷河期」 繁殖難しく輸入も減少

2008年11月30日13時13分

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写真ただ一頭、プールを見つめる豪太。「後ろ姿がもの悲しくみえた」と撮影した河合麻理記者は話す=秋田県男鹿市戸賀塩浜の男鹿水族館

 釧路市動物園のホッキョクグマ「ツヨシ」(4歳)がメスだったことが分かり、秋田県・男鹿水族館の「豪太」(5歳)が嫁取りに名乗りをあげている。だが、北極の氷の減少で絶滅が心配される動物なだけに、ことはそう簡単に運びそうにもない。ホッキョクグマの「結婚事情」を探った。

 ■結婚のため、毎年1600万円準備

 豪太は03年11月、ロシア・モスクワ動物園生まれ。オーストラリア・シーワールドへ行く予定だったのを、無期限貸与という形で譲り受けた。05年6月から男鹿水族館で暮らしている。

 水族館を所有する県は、寺田典城知事自らが04年2月の会見で「夢としては、2歳以下の子ども、オス・メス」が欲しいと話したように、当初から、メスとのペアでの飼育を計画。豪太が来て以来、メス獲得のための費用1627万5千円を予算に計上し続けている。

 男鹿水族館ではホッキョクグマの繁殖をしたことはないが「種の保存のためにも、繁殖に取り組みたいと思ってきた」と飼育主任の飯田新二さんはいう。

 男鹿に来たときは1歳半だった豪太はもう5歳。青年だ。今年の4月ごろには、おもちゃやエサに興味がなくなり、「何かを探すように」動き回ったことがあり、発情したとみられている。だが、お相手のめどは、全くたたない状況が続いてきた。

 ■ロシアへも「見合い写真」

 豪太の嫁探しが難しいのには、二つの大きな理由がある。一つは、国内で繁殖し成獣まで育て上げた成功例が少なく、新たなメスが思うように生まれないということ。二つ目は、ホッキョクグマの保護意識が各国で高まり、輸入が難しくなっていることだ。

 釧路市動物園や国内のホッキョクグマの血統・繁殖計画を管理する北海道の旭山動物園によると、国内には、オス20頭とメス28頭がいるという。冬ごもりしながら育児する北極の巣穴のような、安心して子育てに取り組める環境を日本で整えるのは難しく、出産しても育児放棄などのケースが多い。成獣まで育つのは1割ほどで、繁殖はうまくいっていない。

 国内で、これから適齢期を迎えて豪太のライバルになりそうなオスは、大阪府・天王寺動物園のゴーゴ(3歳)、静岡県・日本平動物園のロッシー(1歳)の2頭。いずれもロシア出身だ。これに対し、ペアを組んでいないメスは、26日に実はメスだと分かった釧路市動物園のツヨシ(4歳)とおびひろ動物園のピリカ(2歳)の2頭ほどしかいないという状況だ。2頭とも札幌・円山動物園生まれで、道内で暮らす。

 ツヨシらへは、男鹿水族館だけでなく、天王寺動物園も27日、さっそく「縁談」をもちかけている。数の上では計算は合うが、ホッキョクグマは、オスとメスが一緒に子育てはせず、つがいにしておく必要がないので、交尾の経験の有無、慣れない本州への移動の必要性などを考えると、豪太やゴーゴの縁談には、障害も多い。

 種としてのホッキョクグマも危機にさらされている。北極の氷の減少でエサのアザラシ狩りが難しくなっていることなどから、06年、国際自然保護連合は絶滅のおそれのある動物を登録する「レッドリスト」に、ホッキョクグマを絶滅「危急種」として登録した。

 保護意識の高まりもあり、欧米の旧西側諸国は、国内での繁殖に力をいれ、日本への輸出はとても厳しくなっている。輸出の可能性が高いのは、ロシアか旧セルビア・モンテネグロぐらいだ。

 実は豪太、出身地のロシアにもお嫁さん探しを頼んでいる。県観光課は28日、新潟のロシア総領事に豪太の写真などの詳しい資料を送ったばかりという。(福井悠介)

     ◇

 旭山動物園、福井大祐主任獣医師の話 ホッキョクグマは、どこの園にとっても、客を呼べる花形動物だ。だが、種の保存というもっと重要な問題を考えれば、繁殖のための貸し出しなどで、一時的に園からホッキョクグマがいなくなっても、長い目で見れば、全体の頭数の増加につながる。施設間の移動が、今後さらに重要になる。

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