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倒れた550歳の老桜、新芽もえ命つなぐ 福島

2009年4月19日13時53分

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写真倒れる2年前の観音桜。大蛇がうねるような枝ぶりが魅力の名木だった=福島県小野町提供

写真「かわいいねえ」。樹齢1年。芽吹いたばかりの観音子桜を見つめる宍戸良三町長=福島県小野町

 福島県東部にある人口1万人余りの町、小野町で07年、宝だった樹齢550年の桜の大木が台風でなぎ倒された。再生は難しいとみんながあきらめていたが、1年前、捨てられていた幹から新芽がもえた。枝幅30メートルを誇った桜の子は、期待を小さな葉で一身に受け止め、すくすく育っている。

 町の天然記念物に指定されていたエドヒガンザクラ、通称「観音桜」は高さ12メートルに及び、東堂山満福寺の参道入り口で枝を垂らしていた。異変が起きたのは07年7月。台風に強い風と雨をたたきつけられ、耐えきれずに根元から折れた。

 宍戸良三町長は倒木を見て思った。「もう、だめだ」。接ぎ木を試みたが、失敗した。幹は輪切りにされ、山の脇に葬られた。町の誰もが、もう姿を拝めないとあきらめていた。

 1年前の春。捨てられた輪切りの幹のそばを通った町長は、目をこらした。「あれ、芽じゃないか?」。緑が見える。すぐに、郡山市にある県林業研究センターに助けを請うた。

 専門研究員の渡辺次郎さんは芽を切り取り、しおれないようクーラーボックスに入れて林業センターに持ち帰った。流水で水分を与え、発根を促してから挿し木をした。「ちゃんと根が出るのか、心配で心配で……」。休日も様子を見に、センターに通った。

 新芽はしおれずに育った。「幹から生えた芽が育つのは全国的にも例がないのでは」と渡辺さんは言う。

 無事に命を受け継いだ子桜は15本前後あり、いま、27〜8センチの高さまで育った。植樹できるようになるまであと2年、花を咲かせるまでには10年程度かかるとみられる。

 「親のように立派になるまで、あと550年。そこまで待てないけれど、30年くらいなら」。54歳の町長は笑う。観音桜の子桜で並木をつくり、町を彩りたい。

 構想は、早くも満開に咲いている。(斎藤健一郎)

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