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柏崎刈羽原発、苦渋の再開 知事「相当プレッシャー」

2009年5月8日6時14分

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写真「常に安全性が高まるような対応が重要」と記者会見で述べる泉田裕彦・新潟県知事=7日午後1時35分、新潟県庁

写真東京電力柏崎刈羽原子力発電所の6号機(左)と7号機=新潟県柏崎市、本社ヘリから、高橋洋撮影

 07年7月の新潟県中越沖地震で停止した東京電力の柏崎刈羽原子力発電所(同県柏崎市・刈羽村)のうち7号機が、9日にも試運転を始める見通しとなった。安全性にこだわってきた泉田裕彦知事が7日、運転再開を認めたからだ。しかし世界でも類をみない地震による長期間の停止は、運転再開を認めた行政側にも、認められた電力会社側にも、課題を残した。

 「夜中に目が覚めるようなこともあった。相当プレッシャーのかかる課題だった」

 普段は自分の心境について語らない泉田知事が7日、胸中を初めて報道陣に語った。県議会全員協議会で、運転再開容認を正式に表明した直後のことだった。

 知事には、様々な関係者から早期再開を求める「圧力」が働いたという。

 4月20日、首相官邸。関係者によると、アジア太平洋経済協力会議(APEC)関連閣僚会合の新潟市開催を要望するため官邸を訪れた知事に対し、河村建夫官房長官が早期運転再開を求めたという。

 原発に反対なら電気を使うなという意見も、県に寄せられたという。「はっきり言って、脅し。怖かった」と知事は振り返る。

 同原発について、国は2月に「安全性は確保されている」との見解をまとめ、地元の柏崎市長と刈羽村長も、再開容認を表明していた。

 にもかかわらず、知事の容認表明に時間がかかったのは、「人が作るものに100%安全なもの、完全無欠のものは存在しない」という、こだわりがあったからだ。ゴーサインを出した後に原発に何かあった場合、間違いなく知事も責任を問われる。

 運転再開にあたって、知事は国の専門家会合とは別に、県独自に専門家を集めて安全性について検証した。14人いる委員の大半は「安全性は確保されている」としたが、新潟大理学部の立石雅昭教授は、原発近くに新たな活断層がある可能性を指摘。知事は「地球の奥深くのことは誰もわからない」と漏らした。

 知事が最後に選んだのは県議会に諮ることだった。県民240万人の一人一人に説明することは不可能だから、県民を代表する県議会に説明することにしたのだ。ただ、一部の県議からは「アリバイ作りのために議会を利用した」との声も上がった。

 日本では再び、原発が地震で被災する可能性もある。東北大大学院の長谷川公一教授(環境社会学)は「原発の運転再開は、首長の判断に大きく左右されるのが現状だ」とした上で、「どういう条件の下で再開が可能かをルール化する必要があるのではないか」と話す。

 柏崎刈羽原発停止後の2期赤字が続き、「3年連続の赤字回避は必達目標」(清水正孝社長)という東京電力にとって、7号機の運転再開は黒字化への最大の切り札だ。

 純損失額は08年3月期が1501億円、09年3月期が845億円だった。停止が続いた場合、10年3月期では火力発電所の燃料費は原発より年間4千億円多くかかる見込みで、1基稼働すれば、年間600億円の増益となる。運転再開は、液化天然ガス(LNG)や石油などの燃料を使う量が減り二酸化炭素(CO2)の排出枠の購入を減らす意味でも、増益要因となる。東電は09年3月期に初めて、CO2排出枠を買った349億円を費用に計上したが、この費用を抑えられる。

 東電は今のところ、10年3月期の利益予想を出していないが、試運転が終盤にさしかかる6月半ばにも黒字の予想を出す見通しだ。

 最も電気が使われる夏場に電力が不足する懸念もほぼなくなる。東電は今夏の最大電力を6100万キロワットと予測し、他社からの融通も含めて6420万キロワット分を手当てすることにしている。さらに7号機が稼働すれば最大電力に対する余力は7.4%になり、適正と言われる8〜10%に近づく。

 ただ、課題も残されている。柏崎刈羽原発でも、耐震工事をほぼ終えた6号機を除く1〜5号機は、運転再開のめどが立っていない。代わりに発電する火力の燃料や耐震補修の費用など、収益への圧迫要因は残る。

 原発を数カ所の地域に集中的に建てる「集中立地」を進めてきた国内の電力各社にとって、柏崎刈羽原発のようにすべて停止となる恐れがつきまとう状況も変わらない。東電は青森県などで原発の建設や着工に向け準備を進めているが、稼働するのはまだ先だ。このため、古い発電所を発電効率の高いLNG火力へ更新している。(奈良部健、諏訪和仁)

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