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エコ棺でおくられびと 段ボール製で有害物質3分の1

2009年6月2日15時14分

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写真展示用のエコ棺の断面。布で覆われていて、見た目には段ボール製と分からない=東京都千代田区、岡写す

 段ボール製のひつぎが普及し始めている。主流の合板製より使う木材が少なく、火葬時に窒素酸化物など有害物質の排出も抑えられるという触れ込みで、業界では「エコ棺(かん)」と呼ばれる。環境問題への関心の高まりが、最期の風景にも及んできた。

 「ずいぶんきれいなお棺ねえ」。4月中旬、67歳の夫をがんで亡くした千葉県の主婦(63)は、自宅に運ばれてきたモスグリーンのエコ棺に目を見張った。葬儀の細かな点は業者任せで、段ボール製と知ったのはこの時が初めてだったが、「環境に配慮したもので送られるなら、夫も喜んでいると思う」。参列者から「私もこれに入りたい」と声が上がるほど好評だったという。

 ひつぎは、キリや輸入木材の合板製が主流だ。エコ棺は3層の強化段ボール製だが、表面を布張りし、見た目には合板製と区別がつかない。強化段ボールは輸入貨物のコンテナにも使われ、エコ棺は250キロの重さにも耐えるという。

 国内に数社あるメーカーの一つ、トライウォール社(東京都千代田区)によると、エコ棺の段ボール製造に使う木の量は合板製の3分の2。だが、合板に必要な接着剤やくぎなどの金具がいらないことから火葬で出る有害物質は3分の1にまで減る。

 段ボール製造が主業の同社がエコ棺の製造に取りかかったのは06年秋。「社会の高齢化が進む中、葬儀でも環境保護のニーズが高まるはず」と考えたという。ひつぎ代の一部を海外の植林事業へ寄付するオプションを付けたこともあり、07年末までに約千本だった販売数が昨年は2千本にまで増え、全国で約300の葬儀業者で取り扱われるようになった。

 関西や首都圏で年間約9千件の葬儀を扱う公益社(大阪市)は、2年前にエコ棺を採り入れ、合板製とほぼ同じ20万円程度で販売している。カタログからひつぎを選んでもらう際、遺族には「これ段ボール製です」と紹介するが、「耐久性を心配する人はいても、段ボール自体を拒む声はほとんどない」(担当者)という。エコ棺の利用は、すでに同社が首都圏で取り扱う葬儀の3割近くに上っている。

 約22万人が加入する首都圏の五つの生協の葬儀を請け負う生活クラブ総合サービス(東京都新宿区)では昨年、取り扱った葬儀の8割近くでエコ棺が使われた。「他の葬儀業者との違いをアピールする一つとして、環境に優しいエコ棺を勧めている」という。

 こうした動きについて、全国約1500業者が加盟する全日本葬祭業協同組合連合会(東京都千代田区)は「葬儀の形は社会の変化に伴ってここ数年で大きく変わっており、エコ棺もその一つ。環境への意識の高まりから、コストや実用性で折り合いがつけば、さらに普及が進む可能性もある」とみている。

 また、葬送について考える雑誌「SOGI」編集長の碑文谷創さんは「地域共同体の衰退で葬送が個々の遺族によって担われ、多様化する中、葬祭業者もさまざまな付加価値をつけた葬儀を積極的に提案している。エコ棺も、そうした動きの一つだ」と話している。(岡雄一郎)

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