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外来トカゲ1万匹駆除成功 秘密はペタペタ作戦 小笠原

2010年7月1日0時24分

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写真粘着式のワナにかかったグリーンアノール=財団法人自然環境研究センター提供

写真希少種のチョウ「オガサワラシジミ」=写真家・尾園暁さん撮影

写真小笠原諸島の父島(奥)=朝日新聞社機から

 独自の生態系の豊かさから「東洋のガラパゴス」といわれる小笠原諸島で、外来トカゲの駆除に粘着式のワナを使った「ペタペタ作戦」が効果を上げている。1万匹以上を捕獲し、駆除した区域では、密度を4分の1以下にすることに成功した。来夏に世界自然遺産への登録をめざす小笠原にとって、外来種対策の成否は大きな焦点。4日から、国際自然保護連合(IUCN)の現地調査が始まる。

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 「粘着式のワナを使ったトカゲの大量駆除は、世界でもほとんど例がない試みだ」

 環境省の委託で駆除作業を進める財団法人自然環境研究センター(東京都)の戸田光彦・生物多様性企画室長は、そう話す。

 小笠原諸島で駆除が進められているのは、全長が15センチ前後になる米国原産のトカゲ「グリーンアノール」だ。

 環境省は粘着式のワナによる捕獲作戦を2006年に父島、08年に母島で始めた。ワナはプラスチック製でゴキブリ捕りに形が似ている。木の幹などに据え付けて使う。トカゲが入ると、足が張り付いて出られない。ワナは父島では港の周辺の約10ヘクタール、母島は島中部の森林地帯約2ヘクタール、約6千カ所に設置した。

 このトカゲは1960年代、まず父島に定着した。80年代には母島に「飛び火」した。現在は数百万匹まで増加。国の天然記念物のチョウ「オガサワラシジミ」など、小笠原固有の様々な昆虫類を食べ、島の生物多様性に深刻な影響を与えてきた。

 駆除作戦では全域で根絶するのは難しいため、希少な昆虫類が多い区域などを選び、重点的に捕獲した。その結果、今年3月までに約1万300匹を捕獲できた。駆除区域内のトカゲの生息密度は、父島では4分の1、母島では5分の1に減少したという。

 環境省によると、父島と母島でワナの設置や回収などにかかる費用は年間4500万円前後。ワナ1個当たり180円と、費用対効果でみれば安上がりの対策になった。

 トカゲの駆除作戦について、神奈川県立生命の星・地球博物館の苅部治紀・主任学芸員は「グリーンアノールの生息密度が減れば、それだけ在来昆虫の生存の可能性が高まる。前例のない取り組みで、すばらしい成果だ」と評価。一方で、「長年、捕食によって在来種は痛めつけられているので、昆虫の数や種類が目に見えて回復するには時間がかかるだろう」と話す。

     ◇

 小笠原諸島は過去に一度も大陸と地続きになったことがなく、生物が独自の進化をとげてきた。国の天然記念物オガサワラオオコウモリが生息し、植物の3割以上、陸産貝類の9割以上が固有種だ。

 しかし、外来種の侵入と拡大が深刻化し、国や東京都が対策に本腰を入れている。弟島では、トンボなどを食べる北米原産のウシガエルをかごわななどで捕り尽くし、根絶。外来種の樹木アカギは、人の手で樹皮を削り取って枯らす作業が行われている。

 現地調査は、ユネスコの世界遺産委員会の諮問機関のIUCNが13日まで行う。IUCN日本委員会は「外来種は島の生態系にとって大きな問題。重点的に調べることになる」という。調査団はトカゲのワナの設置場所などを視察する予定だ。来春までに報告書をまとめ、来夏の世界遺産委員会で登録の可否が判断される見通しだ。

 すでに登録された世界遺産でも、外来種問題は大きな課題だ。南米のガラパゴス諸島では、ブラックベリーなど800種以上の外来植物がはびこるなど、独自の生態系が危機に直面。世界遺産委員会は07年、緊急の保全策が必要な「危機遺産」に指定した。

 環境省の羽井佐幸宏・世界自然遺産専門官は「世界遺産に登録されるためには、将来にわたって確実に自然が引き継がれることを示す必要がある。外来種対策は、そのために必要不可欠だ」という。(山本智之)

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