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渡り鳥の灯火衝突防止へ「ライトダウン」 小笠原・母島

2010年7月20日2時41分

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写真衝突のショックから回復したオナガミズナギドリの幼鳥=08年12月、有川美紀子さん提供

写真保護したオナガミズナギドリを放鳥する母島の住民ら=09年11月、有川美紀子さん提供

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 東京都小笠原村の母島で、渡り鳥・オナガミズナギドリの幼鳥が集落の灯火に衝突する事故が後を絶たず、巣立ちの時期に島民たちが自主的に照明を消す試みが始まっている。専門家はこうしたライトダウンを「鳥と共存するためのユニークな取り組み」と評価する。

 人口約450人の母島には日本の有人島で唯一のオナガミズナギドリ営巣地が南端の南崎にある。毎年、巣立ちの時期に当たる11月中旬から約1カ月は、南崎から約4.5キロ離れた集落のあちこちで、道路や地面にうずくまる幼鳥が見つかる。巣立ちの時間は日没後。海に向かって飛び立つはずが、街灯や民家の光に引き寄せられ、電線や建物、自動販売機に激突し、落下して動けなくなった姿だ。

 東京都小笠原支庁によれば、母島で保護された幼鳥は、報告があったものだけで2009年度が22羽、08年度は60羽、07年度は27羽。都鳥獣保護員の安藤重行さん(60)は「毎年100羽を超えているだろう」と推測する。特に濃い霧が長期間にわたって立ちこめた08年は150羽以上が落下したとみる。

 住民から連絡があれば安藤さんらが保護し、ダメージが軽ければ翌朝、港で放鳥する。だが即死したケースや、車にひかれたり猫に襲われたりして死んだケースもある。

 そうした幼鳥のために集落をライトダウンしようという提案が08年末に持ち上がった。村で開かれた「小笠原諸島返還40周年記念」のシンポジウムに講師として参加したNPO法人小笠原自然文化研究所の鈴木創さん(45)が、会場前で1羽がうずくまっているのを見つけた。鈴木さんが、その鳥を会場に持ち込み、参加者に落下の原因や保護の方法を説明したところ、会場から「巣立ちの時期だけ島の光量を少なくすることができるのでは」という声が上がったという。

 これを受け、小笠原母島観光協会が自治会や青年会、漁協などに「可能な所から照明を落とそう」と呼びかけた。昨年は、協会の坂入祐子さん(58)が入居する3階建ての都営住宅の3階部分で、廊下の電灯7個を消した。

 今年のシーズンに向けては、さらに「島内に14台ある自動販売機にひさしを付けて鳥の目に光が入らないようにする」「毎年12月にナイターで開催される島民スポーツ交流会の時期を変更する」などの案が上がっている。20基の照明が立つ漁港についても、支庁港湾課は「村内の合意ができれば、減灯に協力したい」としている。

 協会の平賀洋子会長(69)は昨年から、経営するペンションの庭の照明を消しているが、今年は懐中電灯10本を購入して「落鳥探索ツアー」を計画。夜、暗い島内で宿泊客が落下した幼鳥を探して歩き、翌朝、放鳥に立ち会うという趣向だ。「鳥とともに生きる島であることをPRできる」と話す。

 東京大学大学院の樋口広芳教授(保全生物学、鳥類学)によると、鳥の衝突事故の原因は、飛行機や風力発電施設に次いで、灯台やナイターの照明、町の明かりなどの灯火が多いとされる。「母島で年に100羽というのは深刻な数字で、何らかの対策が必要。住民主体で始まったライトダウンは、自然との共生をさぐる貴重な取り組みだ」と評価している。(伊藤景子)

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