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「山が怒っている」 噴火続くインドネシア・ムラピ山

2010年11月5日9時15分

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写真噴煙を上げるインドネシアのムラピ山=ロイター

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 【ジャワ島スレマン県(インドネシア中部ジョクジャカルタ特別州)=郷富佐子】インドネシア・ジャワ島中部で先月26日から噴火を続けるムラピ山(2968メートル)の避難地域に4日、入った。火砕流に巻き込まれるなどして犠牲となった約40人には、同山の守護者としてあがめられてきた老人もいる。世界最大のイスラム教国ながら民間信仰の盛んな地域で、人々の不安は広がっている。

 「山が怒っている。守護者が亡くなったので、噴火はますます長引くだろう」。火口から約13キロのスレマン県プルウォビナングン村。1日から避難所で暮らすスカルディさん(70)は、降りしきる雨のなか、心配そうに話した。

 これまでで最大規模の噴火を記録した3日に続き、4日午前(日本時間同)にも噴火した。普段なら間近に見える同山は、噴煙と大雨にかすみ、周辺のトウモロコシ畑や水田にも火山灰が厚く積もる。火山泥流のどろどろとした灰色の塊が、近くのスノウォ川をものすごい勢いで流れていた。

 スカルディさんら地元住民が最も衝撃を受けているのは、同山の精霊と通じる「守護者」として数十年にわたってカリスマ的存在だったマリジャン氏(83)が、26日の噴火の際、火砕流に巻き込まれて亡くなったことだ。

 同氏は、ジャワ島中部で栄えたイスラム王朝の血を引くスルタン(君主)でジョクジャカルタ特別州知事のハメンクブウォノ10世の従者だった。同山が活動を活発化するたびに、避難を呼びかける政府の警告より、「マリジャン師が『大丈夫』と言っているから」と、自宅にとどまって牛や畑の世話を続ける住民も多かったという。

 火口近くに住み、山の精霊へささげる儀式や祈りを取り仕切っていた同氏は、26日の噴火の際にも「自宅で祈り続ける」と避難を拒否。その亡きがらが、ひれ伏して祈りをささげた姿のままだったという「伝説」が広がり、「山の怒りを静められる人がいなくなった」と人々の不安が高まっている。大きな噴火のたびにパニック状態に陥ったり、気を失ったりする人々で大騒ぎになっているという。

 政府は、火口から半径10キロだった立ち入り禁止地域を15キロまで拡大。避難所に逃れた周辺住民は、約9万5千人にのぼっている。3日にはユドヨノ大統領が現地を訪れ、被災地の再建などで政府が積極的に援助する意向を示した。イスラム教徒がメッカ巡礼へ向かう「ハジ」の季節に入っているが、噴煙の影響で最寄りのジョクジャカルタの空港から別空港へ振り替えたり、休航したりするなどの影響も出ている。

 ムラピ山は同国に100以上ある活火山の中でも最も活発で、火砕流を頻発する火山として知られる。近くにある世界遺産のボロブドゥール遺跡では、積もった火山灰の清掃作業が進められている。

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