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トラ守れ 初のサミット 3000頭から倍増へ、生息13カ国連携

2010年11月19日15時30分

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写真拡大シベリアトラ=ロシア東部の野生動物リハビリセンター、WWF提供

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 過去100年で10万頭から3千頭余りまで激減した野生トラの回復、保護に向けて、トラが生息する13カ国の連携が本格的に始まる。ロシアのプーチン首相や世界銀行が、21日からロシア・サンクトペテルブルクで初のトラ生息国首脳サミットを開く。2022年までに、トラの数を倍増させることが目標だ。

 「野生のトラは、アジアの天然の富を象徴する。そんな生物多様性の象徴的なトラが、絶滅寸前にある」

 10月末、名古屋市で開かれた生物多様性条約第10回締約国会議(国連地球生きもの会議)のイベント会場。ロバート・ゼーリック世界銀行総裁が訴えた。

 イベントは、ゼーリック総裁やスミソニアン協会が08年から提唱している「グローバル・タイガー・イニシアチブ」の重要性を訴えるために開かれた。世銀やNGOとトラがいる国の政府が、トラ保護に取り組む世界的ネットワークの構築をめざしている。

 ワシントン条約事務局長や、ブータン、タイなどの閣僚も参列。「密猟や違法貿易を根絶やしにしなくてはならない」「何の対策もとらなければあと10年で絶滅してしまう」などと次々に呼びかけた。

 現在の生息地13カ国は、途上国が多い。世銀は途上国の地域開発を支援しており、トラを自然や生態系保全に配慮した開発につなげる象徴的な生きものとしたい考えだ。

 この13カ国の首脳が、21〜24日にロシア・サンクトペテルブルクで開かれるトラ生息国首脳サミットに集まる。

 サミットでは国境を超えて保護区を共同管理したり、野生生物の監視システムを作ったりする「グローバル・タイガー・リカバリー・プログラム」を始めることを確認した上で、現在約3千頭余りとされるトラの数を、次の寅年(とらどし)の22年までに倍増させることを盛り込んだサンクトペテルブルク宣言を承認する予定だ。

 インドネシアのスマトラ島。世界自然保護基金(WWF)は09年から、島中部の森林にカメラを設置し、推定で約400頭とされるスマトラトラの調査を進めている。

 森林の伐採が禁止されている保護地区で、今年5月上旬にスマトラトラが森を歩く様子の撮影に成功した。

 だが、わずか1週間後、同じエリアに設置されたカメラが、黄色いブルドーザーが突然現れ、樹木を次々なぎ倒してゆく様子をとらえた。ブルドーザーが通った跡には赤茶けた土がむき出しになった。アブラヤシの畑をつくるための違法な森林伐採だった。

 WWFジャパン自然保護室の古澤千明さんは「農地開発とトラの生息地とが重なっている証拠」と話す。

 野生のトラは100年前には世界で約10万頭いたとされるが、現在推定で3千頭余りにすぎない。トラにはインドやネパールなどにすむベンガルトラ、ロシアや中国にすむシベリアトラなど9亜種がある。だが、ジャワトラ、バリトラ、カスピトラの3亜種はすでに絶滅したとされる。

 トラが激減した大きな要因として森の破壊が指摘されている。過去10年間だけでも生息地は40%消失した。

 だが、トラの危機を招いているのはそれだけではない。毛皮や骨を目的にした密猟も後を絶たない。

 スマトラ島の森で今年3月、トラを違法に捕らえるワナが100カ所以上も見つかった。4月にも中国とロシアの国境地帯で、トラの毛皮3枚とトラの骨を持っていた中国人密輸業者が逮捕された。

 野生生物取引の監視団体トラフィックは今月、トラの取引に関する最新報告書をまとめた。00年1月〜10年4月までにインドや中国、ネパールなどの11カ国で押収されたトラの皮や骨、肉などを分析したところ、少なくとも1069頭分が流通していることがわかった。トラフィックは「毎年100頭余りが殺されている可能性がある。各国政府の規制にもかかわらず、違法なトラの取引が続いている」と結論づけている。(神田明美、山本智之)

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