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クニマスの地元・田沢湖、深い喜び 70年ぶり再発見

2010年12月15日18時16分

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写真1935年に西湖村漁協から届いたはがきを見る三浦久さん=秋田県仙北市の田沢湖畔の自宅、中山写す

 「まさかクニマスが生きていたとは」――。秋田県の田沢湖畔に代々住み、クニマスを研究していた故三浦久兵衛さんの長男久さん(61)は、70年前に絶滅したと信じられていたクニマスの再発見に「すごい! 世紀の大発見ですね」と喜んだ。

 田沢湖は秋田県仙北市にある日本一深い湖。最深423メートルで100メートル以深の水温は4〜5度。かつては透明度が極めて高く、クニマスのほか、スナヤツメやイワナ、サクラマス、アユ、ウグイなど多くの魚が生息していた。

 田沢湖の北には玉川温泉があり、湧き出す強酸性の水が玉川に流れ込んでいたため、田沢湖の水で中和して農業用水を確保し、同時にダム湖にして電力供給しようと、1940年に玉川の酸性水を田沢湖に導入した。世界中で田沢湖にしかいない固有種クニマスは1年もたたずに姿を消したという。

 湖畔に住んでいた仙北市の大山文穂さん(78)は「正月に焼いて食べたのがおいしかった」と懐かしむ。「1匹、米一升」と言われた高級魚だったが、35年の漁獲量は8万8千匹近くあった。

 「父が生きていたらどんなに喜んだことか」と久さん。クニマス漁をしていた父の久兵衛さんは「網を引き揚げる時の手の感触、キラキラ光る感じが忘れられない」と話していた。

 玉川の酸性水を湖に入れれば、魚は死ぬと漁師たちはわかっていた。だが、「食糧増産と経済発展が最優先された時代。反対の声はかき消されたのだろう」と久さんはいう。

 クニマスが消えた後、久兵衛さんはクニマスが西湖や本栖湖へ放流されていた記録をみつけた。35年の消印で、田沢湖孵化(ふか)場から送ったクニマスの卵の到着を知らせる西湖村漁協のはがきが、今も久さんの元にある。

 クニマスを研究してきた杉山秀樹・秋田県立大客員教授は「他の湖で生き残っているかも」と期待し、クニマス捜しを仕掛けた。95年から3年間、当時の田沢湖町観光協会が懸賞金500万円を掲げて呼びかけた。各地から送られてきた魚は久兵衛さんと鑑定したが、見つからなかった。

 杉山教授は「遺伝学的に高度な分析ができるようになり、形態学的には判別がつかなかったことも可能になったのだろう」という。「ただ田沢湖のクニマスが絶滅したのは事実。いわば国内産外来種だ」と受け止める。「田沢湖ではもうすめない。貴重な固有種を人間が絶滅させた間違いを二度としてはならない」

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