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シカ食害、新島の攻防 無人島観光の目玉→泳ぎ着き繁殖

2010年12月23日16時37分

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写真壊されたワナ周辺の柵を直す青沼甚彌さん=新島村

写真新島の西に浮かぶ地内島。シカはこの島から渡ってきた=新島村

 伊豆諸島・新島(東京都新島村)で、人間とシカとの攻防が繰り広げられている。約40年前に村が観光目的で、近くの無人島に持ち込んだニホンジカが泳いで新島にたどりつき、農作物を荒らす被害が深刻になった。村は、小さい島ゆえに猟銃を使わず、ワナでの捕獲作戦を展開中。今年も300頭以上を捕獲するものの根絶は難しく、新島村は頭を抱える。

 奥深い山中、幅約2メートルのけものみちを軽自動車が突き進む。シカのふんにょうのにおいなどから割り出して作った捕獲専用のでこぼこの道だ。

 車は掘り起こされたワナを発見し、止まった。運転していた猟友会のメンバー、青沼甚彌(じんや)さん(73)がワナを埋め戻す。落とし穴のようになっていて、脚を入れたらワイヤがしまる仕組みだ。が、シカは逃げてしまったらしい。青沼さんは「シカの力は強いからね。一度脚にワナがかかってももがいているうちにとれてしまうんだよ」と残念そう。

 元々、新島でシカは確認されていなかった。新島から西へ約1.5キロにある地内島。村は1969年以降、この無人島に、観光目的でシカ計約20頭を放った。多摩動物公園などから持ち運び、離島ブームにわく新島周辺の観光の目玉になると考えていた。

 だが、シカが泳いで渡って来ることまでは想定していなかった。青沼さんは、息も絶え絶えに泳いでいるシカを見たという。村の担当課は「まさか、ここまでたどりつくとは思わなかった」と語る。

 上陸したシカは、新島で繁殖。畑ではトマトやかぼちゃ、サツマイモなど野菜の新芽が食べられる被害が増えた。

 新島では16年前から、本格的に捕獲を始めた。島の面積は24平方キロと小さく、村は「島民の安全が一番」と、近年は銃を使った捕獲ではなく、ワナを仕掛けている。

 シカ肉を食べる案も出た。同じようにシカの被害に悩まされている奥多摩町では2006年、猟師らが捕獲したシカの肉を加工する処理施設を作って町の特産品として売り出した。

 だが、島での人気はいま一つ。シカ肉を食べた島民の女性は「ぱさぱさしていて、脂身が無かった」。捕まえたシカは処分している。

 山林ではシカが抱えるダニの広がりも懸念され、冬場の観光客を呼び込もうと計画されているトレッキングツアーの障害にもなっている。

 捕獲頭数は08年度に548、昨年度は446頭。村の担当者は「シカは山奥にいて、何頭いるか想定すらできない。根絶を目指すが、正直難しい。だが、捕獲しなくなれば増えてしまう。続けるしかない」と話す。(長谷文)

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