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桜の標本木、進む代替わり 老齢化で後進育成急ピッチ

2011年3月25日15時1分

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写真拡大今年から観測に使われる標本木(手前)。奥には引退した標本木などが並ぶ=甲府市の甲府地方気象台

 桜の花が開き始める季節。気象庁が出す桜の開花・満開宣言を支えるのは、各地の気象台などが観測を続ける59本の標本木だ。避けて通れないのが木の老齢化。「後輩」に道を譲る標本木もあり、後継の育成が進む。

 甲府地方気象台(甲府市)の標本木(ソメイヨシノ)は、今年から3代目になった。初代と2代目は1951年に気象台の敷地内に植樹され、樹齢は推定60年ほど。53年から観測に使われた初代は、周辺の道路舗装による照り返しの影響で早咲きになったため、70年代に10メートル奥まった場所にある2代目に引き継がれた。

 その2代目も昨年、一部の枝に花が付かなくなった。「満開」宣言には全体の8割以上咲くことが条件。このため代替わりとなった。

 後継候補として副標本木を選び、開花・満開日を標本木と比較して観測を続け、結果に差がないと見極めてから引き継ぐのがルール。甲府の場合、3代目の選定に際して、2本の木を7年間比較観測し、成績がよかった方を選んだ。昨年にはさらに新しい木を植え、後進の育成に余念がない。

 宇都宮地方気象台(宇都宮市)の標本木も今年、60年近く観測に使われていた初代から、推定樹齢40年の2代目にバトンタッチ。「老木になると開花が早まる傾向もある。目立って枯れたわけではないが支障がでないうちに」と担当者。ソメイヨシノの寿命60年説も頭をよぎったという。

 10年間比較観測し、昨春の開花日は初代が4月2日、2代目が3日だった。衰えていない初代による観測も続け、不測の事態があった場合は初代の復帰もあるという。

 トラブルもある。1月に開花する石垣島地方気象台(沖縄県石垣市)の標本木(ヒカンザクラ)は、日本最南端に位置する。2006年の台風で敷地内にあった標本木が倒れ、近くの公園にある副標本木を緊急登板させた。現在、これに代わる木はなく、敷地内にヒカンザクラを植樹して育てている。

 水戸地方気象台(水戸市)の標本木だった街路樹のソメイヨシノは05年2月、降雪の重みで倒れる想定外の事態に。急きょ比較観測していない別のソメイヨシノで観測を始めた。

 東京管区気象台は1966年から靖国神社(東京都千代田区)にあるソメイヨシノを標本木としている。樹齢は70〜80年だが「まだ代える時期ではない」(同気象台)。もともとは東京・大手町の気象庁敷地内にあったが、「長年、観測環境が変化しない場所」として同神社を選んだらしい。

 同神社によると、標本木の根の上は参拝客が通るため土がしまって通気性が悪くなる。そこで、プラスチック製の筒を根元に入れて酸素が行き渡るよう工夫し、定期的に土壌改良もしているという。(二階堂祐介)

     ◇

 財団法人・日本さくらの会(東京都新宿区)事務局長で、樹木医の浅田信行さんの話 桜の寿命は、環境と栄養状態で変わるので一概には言えない。青森・弘前のソメイヨシノは樹齢100年を超える老木でもきれいに咲く。標本木は、安定した開花が求められるので世代交代はしかたがない。木の位置が1メートル違うだけで、風の通り方も周辺環境も変わる。統計の継続性を求めるならば、新旧の移行期間を10年くらいとって比較観測するべきだ。

     ◇

 〈桜の標本木〉 各地の気象台の敷地などにある開花の基準となる木。5〜6輪咲いた状態が「開花」、8割以上開いた場合が「満開」。気象庁の観測は、季節の移り変わりの変化を動植物の定点観測で把握する「生物季節観測」の一環。気象庁による全国的な開花・満開日の発表は1953年に開始。その一方、開花予想については、民間が精度の高い予想をするようになり、2009年春を最後に発表をやめた。民間の一部は気象庁の標本木データを中心に予想している。

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