パネル討論「水素が動かす復興と五輪」|2018講演記録|朝日地球会議2018|朝日新聞

パネル討論
「水素が動かす復興と五輪」
パネリスト トヨタ自動車 パワートレーンカンパニー FC技術・開発部 主査 小島 康一
産業技術総合研究所福島再生可能エネルギー研究所長 中岩 勝
東京大学 教養学部 環境エネルギー科学特別部門 客員准教授 松本 真由美
コーディネーター 朝日新聞編集委員 堀篭 俊材

松本 真由美さん

松本 真由美さん

パネル討論「水素が動かす復興と五輪」では、二酸化炭素(CO2)を出さない「究極のクリーンエネルギー」といわれる水素の可能性を探った。

2020年東京五輪・パラリンピックは、世界各国の選手たちが暮らす選手村に水素による電気と熱を供給する。冒頭には、東京電力福島第一原発事故からの復興をめざす福島県で、大会で使う水素をつくる計画が紹介された。

続いて、3人のパネリストがツイッターなどで事前に寄せられた質問を選んだ。


小島 康一さん

小島 康一さん

「水素を主要エネルギーとして生産する国は?」との問いに対し、東大客員准教授の松本真由美さんは、水分が多くて利用されていない褐炭から水素をつくる豪州の例を挙げた。水素の値段はまだ高く、普及の足かせになっている。「大量に輸入されるようになれば、日本の水素の値段は下がる」と期待した。

トヨタ自動車FC技術・開発部主査の小島康一さんは「電気自動車(EV)と比べた燃料電池車(FCV)の優位性は?」という質問を選んだ。「動力源が蓄電か発電かの違いで、両車とも同じEV。ともに必要な技術だが、貯蔵できるメリットのある水素を使う動きがこれから出てくる」と語った。


中岩 勝さん

中岩 勝さん

いま主流の天然ガスなどの化石燃料から水素をつくる方法はCO2が発生する。「CO2を出さないためにはどうしたら?」との疑問に、産業技術総合研究所福島再生可能エネルギー研究所長の中岩勝さんが応じた。「風力や太陽光など再生可能エネルギーによる電気で水を分解し、水素をとり出すことが非常に重要になる」

福島県浪江町では、太陽光を使う世界最大級の水素製造工場の建設が進む。2年後、日本の水素技術を復興する福島から世界へ。そして、未来へ。パネリストたちの思いは一致した。

コーディネーターから

会場全景

大型の台風や猛暑、豪雨と日本列島は異常気象が続く。エネルギーの自給率の低さや、地球温暖化対策の「パリ協定」で課せられた高い目標も考えると、日本ほど水素社会の恩恵を受けられる国はないだろう。

水素は、発電のため酸素と結びついてもCO2は出ない。水を電気分解すればつくれ、ほぼ無尽蔵にある。送電線で結べない遠い国にも運べる。多くの利点があっても普及は遅れる。

課題もまた、キリがないからだ。火力発電よりコストが高い。まだ高価なFCVに供給するインフラも少ない。「危ない」イメージもつきまとう。

ただ原発事故や大停電で実感したのは、ひとつの電源に頼る社会は意外にもろいということ。未来は、多様な選択肢を追い求める向こうにある。(コーディネーター・堀篭俊材)

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