対談「ドーナツ経済学から見える世界」|2018講演記録|朝日地球会議2018|朝日新聞

対談
「ドーナツ経済学から見える世界」
ゲスト 経済学者、オックスフォード大学環境変化研究所 上級客員研究員 ケイト・ラワース
聞き手 朝日新聞SDGsプロジェクト担当専門記者 北郷 美由紀

会場全景

地球の環境を保ちながら、世界中の人々が不足のない生活を送るために――。ドーナツの図を用いて21世紀のための経済学を提唱している経済学者のケイト・ラワースさんが、世界を再設計する必要性を訴えた。

2重の円を描いてみよう。小さい方の円の内側、ドーナツの穴の部分は、食糧や健康、教育、政治的な発言力などの不足を表す。大きい円の外側は、地球環境の破壊を示す。二つの円の間、つまりドーナツが、人類にとって安全で公正な範囲だ。ここにとどまることができるよう、政治や経済、暮らし方を変えていかなくてはいけない。

地球環境では九つの要素のうち気候変動など四つで、すでに限界を超えている。尊厳のある生活ができていない人も大勢いる。ラワースさんは、経済活動を環境再生産的(循環型)で、再分配型なものに設計し直す必要があると訴えた。とりわけ企業の役割の大きさを強調した。


ケイト・ラワースさん

ケイト・ラワースさん

環境再生産的な商品の例として、修理方法がネットに公開されていて部品が入手できるスマートフォン、リサイクル糸で作るスポーツ用品を挙げた。再分配型の事業としては、利益を従業員に分配する英国のスーパー、コーヒー豆の焙煎(ばいせん)を産地で行うオランダの会社などを紹介した。

「事業をどう展開すれば、地球の生命体や人類に恩恵をもたらすことができるか」。そう考えるのが21世紀型の企業で、自社の利益と株主を最優先するのは20世紀型の企業だという。

ドーナツ経済学は、人々の基本的なニーズを満たしながら、地球の限られた資源の範囲内で身の丈にあった生活をするために考えられた。「21世紀のコンパスに」と、ラワースさん。それを使う人が日本で増えていくことへの期待と希望も語られた。

コーディネーターから

ラワースさんがドーナツの概念を発表したのは2012年。所属していた国際NGO「オックスファム」のリポートだった。反響を呼ぶなかで従来の経済学に対する考察などを加えて出版したのが17年。日本語版「ドーナツ経済学が世界を救う」が今年はじめに出され、初来日となった。

ドーナツの図が歓迎されたのは、持続可能な世界の姿をイメージとして共有できるからだ。それらを実現するための、政治の方向性としてもわかりやすい。

「21世紀のコンパス」は、私たち一人ひとりが手にしている。暮らしを考え、何かを選び取る時に役に立つだろう。社会や世界の現状を理解するためにも使い、未来への責任を果たしていきたい。(コーディネーター・北郷美由紀)

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