パネル討論「次世代につなぐ生物多様性――鳥を守る」|2018講演記録|朝日地球会議2018|朝日新聞

パネル討論
「次世代につなぐ生物多様性――鳥を守る」
パネリスト 日本野鳥の会理事長、オオタカ保護基金代表 遠藤 孝一
薮内正幸美術館館長 藪内 竜太
中央大学理工学部教授、東京大学名誉教授 鷲谷 いづみ
コーディネーター  朝日新聞文化くらし報道部記者 山田 史比古

藪内 竜太さん

藪内 竜太さん

里山など人の手が入ることで形づくられていた自然環境が、人間活動の縮小によって変わり、そこにすんでいた生物が減っていく。人口減少の時代、開発や乱獲による直接的な生態系の破壊とは異なる生物多様性の危機をどう乗り越えるべきか、議論を交わした。

動物画家だった故・薮内正幸さんの原画を展示する美術館の館長を務める藪内竜太さんは、原画を示しつつ、「絵を鑑賞するだけでなく、一人でも多く、生き物に興味を持つ人が増えてほしい」と自身の思いを語った。美術館は自然豊かな山梨県北杜市にあるが、地元の子どもも自然に触れる機会が減っているといい、「親の世代が体験していないと、子どもにも伝わらない。私たちも、自分が住む地域のよさを認識する必要がある」と話した。


遠藤 孝一さん

遠藤 孝一さん

日本野鳥の会理事長で、NPO法人オオタカ保護基金代表の遠藤孝一さんは、里山にすむタカの仲間でカエルやトカゲなどをえさとするサシバが、農業の変化や耕作放棄などにより激減したと指摘。サシバが多く生息する栃木県市貝(いちかい)町の里山に移り住み、環境と地域経済の両立を目指す自らの活動にふれ、「鳥を守ることより、まず人のことを考えること。そこで人が暮らせて、かつ自然も残せることに小さなことでも取り組みたい」と述べた。


鷲谷 いづみさん

鷲谷 いづみさん

中央大学教授で、保全生態学が専門の鷲谷いづみさんは「人が住むところに水田という湿地があったことが、日本の生物多様性が豊かだった一因」と話した。一度は国内での野生個体の繁殖が途絶えたコウノトリなど、水鳥をシンボルとして環境保全型の農法を復活させ、コメのブランド化にもつなげる活動が広がりつつあることを紹介し、「これを共生型稲作と呼びたい。すごく発展してきている」と期待を寄せた。

コーディネーターから

会場風景

開発か保護か。多様な生き物を育んできた日本の自然は、そんな明解な二項対立だけでは議論できない危機に陥っている。

いまでも、直接的な環境破壊の脅威は消えてはいない。一方、身近にあった自然が、人が遠ざかることで静かにかたちを変え、ありふれていた生き物が激減した。里山にすむタカ、サシバの減少はその象徴だ。

人口減少は加速し、耕作や営林の放棄も広がるだろう。放置しても以前の環境が戻るわけではない。すべての里山を維持できないなら、どこに手を入れて保っていくのか、地域の選択も問われる。未来に豊かな生態系を残せるか。いまを生きるわたしたちの責任は重い。(コーディネーター・山田史比古)

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