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2012年12月5日11時36分
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山崎亮 シアワセをデザインする

(26)震災をデザインで乗り越える

写真:「震災+design」プロジェクトは、『震災のためにデザインは何が可能か』(NTT出版)にまとめられ、出版されている拡大「震災+design」プロジェクトは、『震災のためにデザインは何が可能か』(NTT出版)にまとめられ、出版されている

写真:「排水」「生活用水」「飲料水」と白黄黒で色分けされたタグ拡大「排水」「生活用水」「飲料水」と白黄黒で色分けされたタグ

写真:人が知り合い、助け合うきっかけをつくるカード拡大人が知り合い、助け合うきっかけをつくるカード

写真:遊び場を失うこどもたち向けの「秘密基地」拡大遊び場を失うこどもたち向けの「秘密基地」

 3.11の衝撃の直後、山崎亮は思い立って、旧知の人物に連絡を取った。

「『できますゼッケン』をだれでもダウンロードできるようにしよう」

「できますゼッケン」とは、山崎が博報堂と組んでつくった「issue+design」というプロジェクトから生まれたアイディアだった。

 避難所では、だれを助ければいいのか、だれから助けてもらえるのかが見えにくい。被災者のなかには助けを求めたくても、みずから声をあげることに尻込む空気があるかもしれない。あるいは、だれかを助けようにも、どう声をかけていいかわからないボランティアもいるだろう。

 そこで、ボランティアなどで避難所に入った人たちが、自分にできることを書いたゼッケンを首からぶら下げる。

「マッサージが得意です」「ベビーシッターです」「整理が得意です」「お話をお聞きします」

 ただそれだけのシンプルなものだが、できることを具体的に書き記すことで、被災者が声をかけやすくなる。また、被災者であっても同じようにゼッケンをつけることで、主体的にやることを見つけだすきっかけになる。

 このアイディアが生まれたのは、東日本大震災・大津波が起きる3年前のことだ。山崎らが「デザインは避難生活のために何ができるのか」と問いかけ、避難所で起こりうる課題と、それを解決するデザイン案を募集したのだった。

 想定は、首都圏で阪神大震災レベルの大地震が発生し、ある地域で住居の倒壊により家を失った300人が小学校の体育館に避難しているというもの。

 22組44人の学生が参加し、【1】継続を促すデザイン、【2】決断を支えるデザイン、【3】道を標すデザイン、【4】溝を埋めるデザイン、【5】関係を紡ぐデザインの五つの分野からあわせて114の提案が生まれた。そのうちのひとつが「できますワッペン」だった。

 ほかにも、問題を解決するすぐれたデザインが提案された。たとえば、水の効率的な再活用をうながすトリアージタグ。「飲料水」「生活用水」「排水」の3種類が切り取れるようになったタグをペットボトルの首からつるし、一目でどういう用途に使えるのかを示すものだ。あるいは、遊び場が不足することから、こども向けの紙製「秘密基地」の製作というアイディアもあった。

 この企画は、地域や日本、そして世界が抱える社会的な課題(issue)を、市民の創造力(design)で解決することに挑むもので、「震災」の後、テーマは「超高齢化社会」「自転車通勤」「こどもの放課後」「食品流通」などに広がった。

 デザインの力は社会を変えうる――山崎がその確信を深めたのは、アメリカ西海岸のサンフランシスコを訪れたときだった。=敬称略 (諸永裕司)

プロフィール

山崎 亮(やまざき りょう)

 1973年生まれ。studio−L代表、京都造形芸術大学教授。地域が抱える課題を、地域に住む人々が解決するコミュニティデザインの第一人者。「海士町総合振興計画」「マルヤガーデンズ」でグッドデザイン賞を受賞。

 著書に『コミュニティデザインの時代』(中央公論新社)、『ソーシャルデザイン・アトラス 社会が輝くプロジェクトとヒント』(鹿島出版会)、『コミュニティデザイン――人がつながるしくみをつくる』『つくること、つくらないこと』(以上、学芸出版社)、『コミュニティデザインの仕事』(BIOCITY50号記念増刊号)、『まちの幸福論』(NHK出版)、『地域を変えるデザイン』『海士人』(英治出版)など。

ホームページ 「studio−L」

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