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2012年12月12日11時20分
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山崎亮 シアワセをデザインする

(27)ガラクタから価値を生みだす

写真:緑化される前の基地跡地拡大緑化される前の基地跡地

写真:ボランティアによる段階的な緑化を観察する園路もある拡大ボランティアによる段階的な緑化を観察する園路もある

写真:売店は豊富な品揃え拡大売店は豊富な品揃え

写真:オリジナルのオシャレな品々が並ぶ拡大オリジナルのオシャレな品々が並ぶ

写真:「YOUR PURCHASE SUPPORTS THE PARKS」。思わず、財布のひもがゆるむ拡大「YOUR PURCHASE SUPPORTS THE PARKS」。思わず、財布のひもがゆるむ

写真:家島の名産品となった「のりっこ」拡大家島の名産品となった「のりっこ」

写真:のりもまた、島づくりワークショップの延長線上で生まれた拡大のりもまた、島づくりワークショップの延長線上で生まれた

 デザインの可能性についてあらためて考えさせられたのは、アメリカ西海岸のサンフランシスコにある「クリッシーフィールド」という公園だった。

 サンフランシスコ湾の入り口に面し、ゴールデンゲートブリッジに近く、市民の憩いの場として知られている。かつて米空軍基地だった。その広大な跡地が2001年春、ボランティアによる自然回復プログラムなどによって国立公園としてよみがえった。

環境を整える過程で、クリッシーフィールドが目をつけたのは「ガラクタ」だった。

 たとえば、ゴミが広がる一帯を歩いて集めた廃材を使ってアート作品をつくる教室は、参加料2千円。自然回復という趣旨に賛同した著名人が広告塔として講師役を買ってでるなどしたおかげで、人気の講座になった。

公園側からすれば、参加者はボランティアどころか、2千円払ってごみ拾いをしてくれる存在ということになる。マイナス要因を逆手にとって、環境整備と財源確保を実現する仕掛けは当たった。

 そのほか、公園内のショップには、選び抜かれたさまざまな商品が売られている。山崎亮は訪れるたび、3万円分ほど買い込んでしまうという。財布の紐をゆるませるのが、ショップ内に掲げられた看板だ。

〈あなたが購入した売り上げが環境整備に使われます〉

 商品を買うことが、公園の環境向上につながることを示すメッセージだ。自分のお金がどう使われるか「見える」ことによって人々の購入意欲を駆り立て、結果的に運営資金をつくる。

 山崎はいま、クリッシーフィールドと同じような仕組みを立ち上げられないか、と考えている。全国でコミュニティデザインにかかわった70ほどの地域それぞれのイチオシ商品を買うことのできるウェブサイトを立ち上げようというのだ。

 それは、瀬戸内海に浮かぶ家島のまちづくりにかかわって以来、ずっとやりたいと考えてきたことでもある。

 家島のおばちゃんたちによるNPOが売り出す「のりっこ」は、地元ののりからつくる佃煮だ。輸送費など離島のハンディを負っている分、価格だけでほかの商品と比べられると勝ち目が薄い。でも、この商品を買うと、「家島のおばちゃんたちの活動を応援できる」という仕組みになれば、より価値あるモノに投資をしたいと考える消費者の気持ちを動かすことができる、と考えている。

 そのために、ウェブサイトでは、生産者の素顔だけでなく、生産者がどのような公益的な活動にかかわっているかについての情報も示すという。

 たとえば、家島のおばちゃんたちのつくるNPOは収益の一部でコミュニティバスを走らせている。また、姫路市との合併によって消えてしまった広報紙を復活させたいとも考えている。冠婚葬祭などにかかわる情報が暮らしに欠かせないためだ。

 このウェブサイトができても、取り扱う商品に特別なものはないかもしれない。それでも、同じ買うなら、顔の見える人々がつくった商品を買うことで、その地域を豊かにする。いわば、「志」も一緒に買ってもらえないか、と山崎は考えている。

 ただ、地方の名産品を扱うセレクトショップのような店舗を東京につくることはしない。高い賃料にくわえ、地方から商品を送る輸送費などもかさみ、結果として、商品の値段が高くなってしまうからだ。

 地域の人は大きな儲けを期待しているわけではない。働きに応じた報酬が入り、その収益で地域をよくする。その循環を自分たちで生みだすことが重要なのだ。

 狙いはそれだけではない。ウェブサイトに「あったらいいね!」ボタンをもうけ、たとえば1千件押されたら「ニーズあり」と判断して商品化に踏み切る、というようなことも期待できるだろう。消費地である都会の動向がつかみきれないため商品化をためらうという、過疎地や遠隔地のデメリット解消にもつながるのではないか、と山崎は言う。

 ウェブ上に投稿された提案に対して、価値を認めたり面白いと思ったりしたら寄付するという動きが少しずつ広がっている。この「クラウド・ファンディング」ならぬ、「クラウド・バイイング」の仕組みと言える。

 買えば買うほど地域が元気になる。ありきたりのものに「価値」を加えることもまた、デザインなのだ。=敬称略 (諸永裕司)

プロフィール

山崎 亮(やまざき りょう)

 1973年生まれ。studio−L代表、京都造形芸術大学教授。地域が抱える課題を、地域に住む人々が解決するコミュニティデザインの第一人者。「海士町総合振興計画」「マルヤガーデンズ」でグッドデザイン賞を受賞。

 著書に『コミュニティデザインの時代』(中央公論新社)、『ソーシャルデザイン・アトラス 社会が輝くプロジェクトとヒント』(鹿島出版会)、『コミュニティデザイン――人がつながるしくみをつくる』『つくること、つくらないこと』(以上、学芸出版社)、『コミュニティデザインの仕事』(BIOCITY50号記念増刊号)、『まちの幸福論』(NHK出版)、『地域を変えるデザイン』『海士人』(英治出版)など。

ホームページ 「studio−L」

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