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2012年12月27日9時53分
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山崎亮 シアワセをデザインする

(29)働いて「傍」の人を楽にする

写真:まちの魅力を納めた環濠地区(堺市)についての冊子拡大まちの魅力を納めた環濠地区(堺市)についての冊子

写真:商店街にも協力してくれる店が生まれた拡大商店街にも協力してくれる店が生まれた

写真:独立後の事務所づくりには、山崎亮さんみずから汗を流した拡大独立後の事務所づくりには、山崎亮さんみずから汗を流した

写真:「シアワセのデザイン」が生まれる事務所拡大「シアワセのデザイン」が生まれる事務所

 じつは、独立する前に建築設計事務所に勤めていたころから、働き方はずっと変わっていない。就職2年目に、日本造園学会関西支部が主催するワークショップに参加した。大阪府堺市にある環濠地区のまちづくりを考えるプロジェクトだった。

 そこで、山崎が率いたのは、生活という切り口からまちづくりを考えるチームだった。15人ほどでまちを歩き、ワークショップを重ね、どんな屋外空間が魅力的かを提案にまとめて、学会で発表した。しかし、その後も集まりを続け、冊子や大看板などもつくった。初めは怪訝そうにしていた地域の人たちが自分たちのまちの魅力に気づき、まちが変わっていく予感を抱きはじめた。

生活スタジオのメンバーは仕事のかたわらに集まっては、まちの未来像を描いて議論を重ね、ときに徹夜になることもあった。

「こんなことを仕事にできる会社なら、きっと楽しいよね」

 無理だとわかっていながら、そう語り合っていた。

 5年目となる2005年、山崎は言葉通り、建築設計事務所から独立し、「studio−L」をつくった。Lは、生活を意味する「life」の頭文字。生活スタジオの仲間たちのうち3人も合流した。地域のためになることのために、楽しみながら働く。

「あのころから、僕たちは本質的にはなにもかわっていないんです」

山崎のすすめるコミュニティデザインとは、地域そのものを変えるだけでなく、そうした働き方を広げることでもある。

 そもそも、受け身でいて豊かな生活を手に入れられるだろうか。いや、殿様のように奥座敷に座ったまま待っていては幸せにはつながらない。山崎にはそんな予感があった。

 やらされたら、長続きはしない。でも自分から動けば、楽しいことに出会える。だから、コミュニティデザインの現場では、やらされているという虚無感とは無縁だ。だれのためにやっているのかが見えない、という無力感もない。

だから、山崎は住民たちにもこう話す。

「『行政がやってくれない』と文句をいうのはやめて、自分たちで動きましょう」

人と人とがつながる「手づかみの充実感」。自分で楽しさを見つけて育む。やりたいと思えることだから力を注ぐ。その結果、人生は楽しくなる、というのだ。

「人と話して、おいしいものを食べて、温泉につかって、移動する。これが僕の仕事です。いつか本当の仕事をしなければとは思うのですが……」

 そう語る山崎の日常には、たしかに「シアワセ」がついてきている。シアワセになるために働くのではなく、日々、働くことそのものがシアワセになる。

「働くとは、『傍(はた)にいる人を楽にすること』なんだって言うじゃないですか」

 コミュニティデザインという仕事だけでなく、幸せとはなにかということを、山崎はみずから証し立てている。(敬称略)=諸永裕司

プロフィール

山崎 亮(やまざき りょう)

 1973年生まれ。studio−L代表、京都造形芸術大学教授。地域が抱える課題を、地域に住む人々が解決するコミュニティデザインの第一人者。「海士町総合振興計画」「マルヤガーデンズ」でグッドデザイン賞を受賞。

 著書に『コミュニティデザインの時代』(中央公論新社)、『ソーシャルデザイン・アトラス 社会が輝くプロジェクトとヒント』(鹿島出版会)、『コミュニティデザイン――人がつながるしくみをつくる』『つくること、つくらないこと』(以上、学芸出版社)、『コミュニティデザインの仕事』(BIOCITY50号記念増刊号)、『まちの幸福論』(NHK出版)、『地域を変えるデザイン』『海士人』(英治出版)など。

ホームページ 「studio−L」

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