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2013年1月9日10時43分
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山崎亮 シアワセをデザインする

(30)「つくらないデザイン」から脱却

写真:「ほかのまちや、かつて手がけたまちのコピーはしたくないですね」拡大「ほかのまちや、かつて手がけたまちのコピーはしたくないですね」

写真:「被災地でたんに『集まりましょう』と声をかけて扉をノックするだけではだめ」集まりたくなっちゃうようなきっかけをどうつくるか。「被災者同士がつながるための『理由』をデザインしたいですね」拡大「被災地でたんに『集まりましょう』と声をかけて扉をノックするだけではだめ」集まりたくなっちゃうようなきっかけをどうつくるか。「被災者同士がつながるための『理由』をデザインしたいですね」

写真:仮設住宅って、いまと似ているなあ、と思う。なぜなら、だれもずっと住もうとは思っていない。隣人にあまり興味がない。拡大仮設住宅って、いまと似ているなあ、と思う。なぜなら、だれもずっと住もうとは思っていない。隣人にあまり興味がない。

写真:だから、まちのコミュニティデザインが必要になる。「逆にいえば、いまのまちって仮設っぽいですよね」拡大だから、まちのコミュニティデザインが必要になる。「逆にいえば、いまのまちって仮設っぽいですよね」

写真:studio−Lの伊賀事務所。使われなくなった木々が見事によみがえった。拡大studio−Lの伊賀事務所。使われなくなった木々が見事によみがえった。

写真:コミュニティデザインの本質が凝縮された空間だ。拡大コミュニティデザインの本質が凝縮された空間だ。

写真:さあ、あしたはどこのまちに行こうか。拡大さあ、あしたはどこのまちに行こうか。

 ずっと、疑問の声を浴び続けてきた。設計ができるのに、なぜつくらないデザインなのか、と。

 ひとつには、コミュニティデザインの現場に入っていくときに、「デザイナー」というアイコンが邪魔だったという事情があった。

 デザイナーを名乗ると、すぐに、

「じゃあ、あれつくってよ」「デザイナーなら、これぐらいできるでしょ」

 と言われてしまう。しかし、「誰か」に依存してのまちづくりは、その「誰か」がいなくなるとともにしぼんでしまう。

 それに、「ものはつくらない」と宣言することには別の意図もあった。住民たちはとかく「カタチ」を考えようとする傾向が強い。でも、住民たちに考えてほしいのはカタチではなく、どういう活動をするか。ハードではなくソフトの部分だ。だから、山崎はあえて「つくらない人」という衣を纏(まと)い、住民たちがカタチの議論から離れるように意識づけしていたのだった。

 一方で、「ものをつくらない」と言い放つことによって、ものをつくる人たちから「ものづくりの力を信じないのか」という批判も受けることも少なくなかった。山崎はみずから「ものづくりフェチ」というほど、絵を描いたり、デザインを考えたりすることが大好きだ。それでも、ソフトを生みだしていくというコミュニティデザインの手法を定着させるために、あえて封印したのだった。

 それが最近、変わった。コミュニティデザインへの認知度が高まってきたいま、山崎はこう考えている。

「そろそろ、『つくらないデザイン』一辺倒から脱却しようかと」 

 つくることも、つくらないこともどちらも選べる。そういうスタンスに立ったとき、より柔軟な、より適切な解決策を導きだせると考えるからだ。

 その象徴となるのが三重県伊賀市で進めている通称「ホヅプロ」。

 海外から安い木材が流入し、国内産の木材が売れなくなり、山の管理がおろそかになって林が荒れる――そんな悪循環を断ち切ろうと、国産材を使った家具作りのワークショップなどを開いている。

 それだけではない。製材所の広大な敷地の一角に、studio−Lの2番目となる事務所を建てたのだ。丸太を製材するときにでる、端材やおがくずや木の皮を捨てずに使う。端材は3千枚の長方形に切り分けて壁の内側に貼り付け、おがくずは断熱材代わりに使い、皮は乾燥させてストーブの燃料とした。丸太すべてを使い切るという方法で建てた事務所は、2012年度のグッドデザイン賞を受賞した。

 設計にはもちろん山崎がかかわり、図面はインターンの学生が引き、途中の設計変更には事務所のスタッフが当たった。自分たちでつくれば、自分たちでメンテナンスもしやすい。この伊賀事務所には、ワークショップだけを専門にするスタッフも、一級建築士のスタッフもいる。

「それによって、ソリューションの幅を広げたいと考えているのです」

 山崎はいま、「コミュニティデザインの第一人者」としての縛りから離れ、ようやく自由になりつつあるのかもしれない。

 これからは、これまで断ってきた、ものづくりだけの仕事も請け負うし、デザインだけの仕事もするという。両者のバランスを取りながら最適解を見極めていくというのは、その働き方にも通じる。「趣味」と「労働」のどちらかに偏ることなく、それが混じり合う領域での仕事をめざしたいと考えている。

 ワークショップや講演会で参加者に見せるパワーポイントの資料には、三つの円が重なり合って描かれている。

 「やりたいこと(wish)」と「できること(can)」が重なり合う領域にあるのが「趣味」。

 「できること(can)」と「求められていること(needs)」。重なり合うところが「労働」。

 「やりたいこと(wish)」と「求められていること(needs)」。重なり合うところが「夢」。

 そして、「やりたいこと(wish)」と「できること(can)」と「求められていること(needs)」の三つが重なり合う領域にあるのが「企画」だという。

 企画とは、いわば解決策。処方箋とも言える。病気は、患者がみずから病を治そうと思わない限り、治すことはできない。それはコミュニティデザインにも通じる。住民みずからが、自分たちのまちを暮らしやすくしようと動かない限り、本質的な問題は解決しない。主役はほかならぬ「自分」なのだ。

「まち医者」ならぬ「まちの医者」。山崎はいま、なかなか復興が進まない被災地へと視線を向けている。〈おわり〉=敬称略(諸永裕司)

プロフィール

山崎 亮(やまざき りょう)

 1973年生まれ。studio−L代表、京都造形芸術大学教授。地域が抱える課題を、地域に住む人々が解決するコミュニティデザインの第一人者。「海士町総合振興計画」「マルヤガーデンズ」でグッドデザイン賞を受賞。

 著書に『コミュニティデザインの時代』(中央公論新社)、『ソーシャルデザイン・アトラス 社会が輝くプロジェクトとヒント』(鹿島出版会)、『コミュニティデザイン――人がつながるしくみをつくる』『つくること、つくらないこと』(以上、学芸出版社)、『コミュニティデザインの仕事』(BIOCITY50号記念増刊号)、『まちの幸福論』(NHK出版)、『地域を変えるデザイン』『海士人』(英治出版)など。

ホームページ 「studio−L」

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