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(39)エゾナキウサギ 冬に備え勤しむ貯食

[掲載]2002年9月15日

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写真:ナキウサギ科の仲間はヒマラヤなど、哺乳類では最も高地に住むという。トムラウシでは真夜中のテントの中で鳴き声を聞いたことがある拡大ナキウサギ科の仲間はヒマラヤなど、哺乳類では最も高地に住むという。トムラウシでは真夜中のテントの中で鳴き声を聞いたことがある

写真:エゾナキウサギ拡大エゾナキウサギ

 耳を寝かし、鼻先を突き出すように「ピィッ」「ピィッ」。その鳴き声に三カ所ぐらいから応えがある。歩くとカラカラと乾いた音のするガレ場。ここはナキウサギの国だ。

 カルメンのように葉っぱをくわえた一羽が登山道近くに姿を見せた。ナキウサギは夏の終わりから「貯食」の作業を始めている。草や木の葉を刈り取り、冷たい岩のすき間に運び込む。

 低温で保存された「乾燥野菜」は冬の間の食料になる。賢明なナキウサギたちは季節をしっかり感じ、また来る冬に備えるのだ。

 その小さな哺乳(ほにゅう)類が北海道で発見されたのは昭和に入ってからのことだ。1928年、網走支庁置戸町−。植林したカラマツの苗木がかみ切られ、持ち去られてしまう。箱わなで捕獲され、新種として確認された。

 エゾナキウサギは氷河時代、大陸と地続きになった宗谷海峡を北方系の動物たちと南下してきた。その後、氷河が後退し、冷涼な高山の露岩帯に取り残されたといわれている。

 今は岩住まいだが、太古の世界では凍った大地をはね回っていたのかも知れない。もしかしたらマンモスの背中に乗ってやって来た?! 遠くを思う瞑想(めいそう)のポーズを見ながら、そんな想像をしてみた。

石毛良明(いしげ・よしあき)

 朝日新聞むつ支局長。現在、青森県版で「下北半島 野生博物館」を連載中。
 神奈川県横須賀市生まれ。早稲田大学卒業後、1981年に朝日新聞社に入社。山形総局、静岡総局、東京本社を経て北海道に勤務。02年から、北海道版で「北海道 野生博物館」を連載した。「野生生物をカメラに収めるには、撮る技術より、出会えるかどうかが決め手になります」。52歳。著書に「ザバーン」(中西出版)。

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