2011年11月29日
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ビーズのような目。ふさふさで平らな尻尾が小枝と共に揺れている。誰もが寝静まった恐山山地の夜。
手のひらに載るくらいの大きさなのに、ヤマネはどこかマイペース。じっと見つめていたかと思うと、スイッチが入ったように動き始めた。
左右に張り出した小さな手足をフル回転。ブナの幹をはうように走る。細い枝は逆さになって移動し、縦横無尽の身軽さで弾けるようにジャンプした。
こんな元気者も一年の半分は鞠(まり)のようになって動かない。エネルギーの消耗を抑えて冬眠するのだ。日本の哺乳類の「最古参」ともいわれ、氷河期を丸くなって生き抜いたのだろうか。夏の活動期でも眠る時は体温を下げ、心拍や呼吸数を減らすという省エネぶりだ。
「のんびり」「ねぼすけ」「マイペース」と言われても、それが彼らのライフスタイル。小さな体に生命維持のメカニズムも秘めて、ちょっと不思議な動物が北の夜に生きている。(おわり)
(2011年11月11日付朝日新聞・青森版に掲載されたものです。今後も朝日新聞青森版では「下北半島野生博物館」として、不定期で掲載される予定です)

朝日新聞むつ支局長。現在、青森県版で「下北半島 野生博物館」を連載中。
神奈川県横須賀市生まれ。早稲田大学卒業後、1981年に朝日新聞社に入社。山形総局、静岡総局、東京本社を経て北海道に勤務。02年から、北海道版で「北海道 野生博物館」を連載した。「野生生物をカメラに収めるには、撮る技術より、出会えるかどうかが決め手になります」。52歳。著書に「ザバーン」(中西出版)。
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