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「ハイブリッドは面白い」 プリウス開発者インタビュー

2009年6月3日

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写真プリウスを開発した大塚明彦さん

写真新型プリウス=5月18日、東京都港区で

写真プリウス発表会に臨む大塚さん(左)。
中央は豊田章男次期社長=5月18日、東京都港区で

 トヨタ自動車のハイブリッド車(HV)、新型「プリウス」は、5月末時点で受注台数が早くも10万台を突破した。冷え込んだ自動車市場のカンフル剤として期待される3代目の開発は、どんなコンセプトで、どこにターゲットをおいて進められたのか。担当チーフエンジニアの大塚明彦さん(46)に話を聞いた。(聞き手・原島由美子)

 ──今回でプリウスも3代目。まず、新型のコンセプトは何ですか。

 プリウスは、トヨタのHVのフラッグシップ(旗艦)です。HV市場の競争が激しくなっているなかで、プリウスがプリウスであり続けるために、初代から続いている「環境、燃費性能に配慮したエコカー」という、「プリウス・ブランド」の基本コンセプトは変えていません。3代目では、そのコンセプトに最新の技術を投入することで、独特な「未来感」を全体から醸し出せたらと考えました。

 ──購入者のターゲットは?

 これまでのプリウスの購入層は、50〜60歳代が多かったんです。子育てを終え、クラウンやマークXを下取りに出して、夫婦だけでダウンサイジングした車をゆっくり楽しもうという世代。プリウスなら自分たちも納得でき、他人から見られても恥ずかしくない、ということでしょう。

 3代目は、30〜40代を新たにターゲットとしました。この層は環境意識が高く、クルマ本来の楽しさも重要視しつつ、性能、機能だっておろそかにしない。お客様のすそ野を広げようと旧型よりも価格を抑え、5人家族でも選択肢に入れてもらえるよう、車内の広さを確保しました。

 決められた原価の中でも、あまりにチープにはしたくありませんでした。その工夫の一つとして、インストルメント・パネルの表面に葉脈をイメージした模様をつけました。

 ──そのほかの自慢のポイントは。

 太陽光発電システム(オプション)ですね。電動開閉式のルーフに取り付けたソーラーパネルで発電し、その電力で室内の換気を行う仕組みで、トヨタとして初投入した機能です。今までは日差しが強い日は、屋根付きの駐車場に止めておきたがっていた人も、屋外に停めたくなる。今までの固定観念を変えるシステムです。

 ──この世界的な大不況は、車作りに影響しましたか?

 去年の秋にはすべての基本仕様を固め、その後は品質向上に費やす時期だったので、不況が一気に進んでいく中でも、部品一つでもさわったり、変えたりする余地はありませんでした。

 ──大塚さん自身は、HVの開発をいつから手がけているのですか。

 エスティマの初代ハイブリッドが最初で、それからアルファード、エスティマのHV2代目、そして今回のプリウス3代目です。

 ──3代目プリウスのチーフエンジニアには立候補した?

 以前から「プリウスをやりたい」とは言い続けていました。そして、すでにもう愛着があるので、「4代目もやりたい」と宣言しています(笑)。2世代は担当しないと。

ハイブリッドの開発はおもしろい。今まで考えなくてもいいことを考えるので、開発の幅が広がる。つまり開発の自由度が広がるのです。

 最近はすべての開発が「まずはプリウスから」という流れになってきています。でも「3代目」は難しく、たいてい失敗しがち。だからあまり成功するかどうかという結果は気にせず、プリウスのコンセプトはしっかり維持しました。

 工場から最初の1台が出てきた時は、ほろっと来て。「大切にされてね」と思いましたよ。娘とか恋人といった感覚? いや、車に対しては女性とか男性とか分けず、中性的なイメージですね。

 (次期社長の)豊田章男さんに誘われて、ドライバー3人の平均燃費などを競う、プリウスカップにも出ました。参加する前は「地味でつまらないんじゃないか」といった先入観がありましたが、実際にやってみると、タイムとコースを気にしながら、どこでエンジンとモーターを使うか考えるなど、とても知的でした。エコをテーマにしたモータースポーツも楽しめますね。

 4代目の開発もやらせてもらえるのなら、家庭用電源から充電できる「プラグイン・ハイブリッド」をメインの一つにしたいです。

 ──ライバルのホンダは、2月にHVの新型「インサイト」を発表しました。プリウスと良く比較されるインサイトをどう見ていますか。

 最初は200万円を切ると聞いて、正直びっくりしました。ただ単に「シビック」をダイエットさせただけでなく、内装などは割り切りつつ、性能は維持していますね。

 でもインサイトのハイブリッドシステムはエンジンが主役。モーターだけでも走れる「プリウス」と完全に重複することはないな、と思いました。

 ──3代目プリウスへの反響、評価に対しては。

 5月18日の販売開始前に8万台の予約だなんて、信じられませんでした。「これまでの最高だった初代『イスト』の予約4万7000台を超えたらいいなあ」くらいに考えていたので、全社的に想像外だったと言えます。

 でも、本当の評価はまだわかりません。今はエコカー減税や補助金なども後押ししているかもしれないので、1年後はどうなっているか・・・。

 街中、プリウスだらけになったら、逃げていってしまう方もいるでしょう。今後は何か外部デザイナーとの特別コラボといった可能性も探る必要性があるかもしれませんね。

 <大塚 明彦(おおつか・あきひこ)>
 1962年生まれ、大阪府豊中市出身。86年、トヨタ自動車入社。93年、スープラの2代目で振動騒音開発を担当し、エスティマやアルファードの初代HVの製品企画の主担当員に。04年からプリウス3代目の開発に携わってきた。趣味はドラム、釣り、料理。愛車はアルファロメオGTV。

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