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10月14日朝日新聞デジタル朝刊記事一覧へ(朝5時更新)

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パネル討論
「豊かな森と人~おいしい水がわき出るエコパーク」
自然、賢く使いながら守る
パネリスト:松田 裕之、広瀬 和弘、塩沢 久仙
コーディネーター:米山 正寛

塩沢 久仙
南アルプス芦安山岳館館長

山梨、長野、静岡3県にまたがる南アルプスの山岳、山間地域約30万ヘクタールが6月、ユネスコの生物圏保存地域「エコパーク」に登録された。森と人間が共存し、社会を発展させるために何ができるのか。取り組みについて話し合われた。

山梨県南アルプス市の南アルプス芦安山岳館館長、塩沢久仙さんは、南アは国内でも屈指の多雨地帯で森林が発達し、ライチョウやキタダケソウなど貴重な動植物の宝庫になっていることを説明。「非常に多様性に富む自然を守りながら、管理、運営を目指していきたい」と話した。

同市ユネスコエコパーク推進室の担当リーダー広瀬和弘さんは、同市を含む3県10市町村の登録に向けた取り組みを語った。「県も違う10の市町村関係者が定期的に集まるのは大変だったが、一致団結しようと決めた。そして憲章策定など五つの基本合意を結んだ」と振り返り、今後は「長続きできる活動と体制を組むことが必要」と話した。


広瀬 和弘
南アルプス市ユネスコエコパーク推進室
担当リーダー

横浜国立大学大学院環境情報研究院の松田裕之教授は、エコパークと世界自然遺産の違いは「人間が入る」ことだと説明。「自然を賢く利用する人と文化を守ることが最近の自然保護の潮流。自然を使いながら守っていくことが使命になる」と語った。同じくエコパークに登録されている宮崎県綾町で、木工・手工芸品作りや有機農業に取り組み、観光に活用している例を取り上げ、手作り活動の重要性を強調した。

広瀬さんはエコパーク登録について「地域社会の発展を目指すには世界自然遺産よりも良かったと思う」と話した。塩沢さんは「登山者はパーク内の『核心地域』や『移行地域』などの違いがわからないと思う。大切な地域を立ち入り禁止にしたのでは自然の恩恵は受けられない。行政機関と住民が一緒になって、利用できる取り組みをしていくべきだ」と話した。

<コーディネーターから> 農山村の価値、注目につながる

松田 裕之
横浜国立大学
大学院環境情報研究院 教授

2年前に綾(宮崎県)が新登録され、ユネスコエコパークという言葉が紙面に登場し始めた。今年になって只見(福島県)と南アルプス(山梨、長野、静岡県)の登録、志賀高原(長野、群馬県)の拡張が新しく認められた。知名度はまだ低いが、エコパークは農山村の価値に目を開かせてくれるツールになりうる、との思いで議論を進めた。

その基本は貴重な自然も身近な自然も、ともに大切にする姿勢だ。静かに見守るべき場所があれば、持続的に使う中で恵みをもたらしてくれる場所もある。そんな考え方は、神のいる奥山と人の暮らす里山を使い分けた、かつての日本の生活にもつながる気がする。

登録に当たっては国際的な評価がなされるため、どこでも有効な仕組みではない。ただ、申請を考える中で地域を見つめ直す目が増えれば、その先に新たな飛躍が待っていることだろう。

(森林文化協会・米山正寛)