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09月21日朝日新聞デジタル朝刊記事一覧へ(朝5時更新)

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パネル討論
「脱炭素社会へ向けて/パリ合意への期待」 パネリスト:ティエリー・ダナ、ヘザー・ザイカル、賀 克斌、小林 光、高村 ゆかり
コーディネーター:西村 陽一

西村
パリ合意に向け、京都議定書から継承すべき点、克服すべき点、新たに実現すべき点は何か。

パネル討論の様子

ダナ
京都議定書は重要な一歩だった。ただ、現在の対象は37の先進国。温室効果ガスの排出削減をインド、中国抜きで話すことに意味はなくなった。もっと普遍的なものにしないといけない。一方、再生可能エネルギー(再生エネ)はSFのような状況だったが、競争力を持ち始めた。米国と中国では、気候変動が緊急の問題として考えられているのか。

ザイカル
オバマ大統領は、優先度が高い、将来の子どもたちの問題だと意識している。今や気候変動の問題を語ることなく選挙に臨むことはできない。


中国では国際的な約束というだけでなく、国内の大気汚染の問題があり、二つの問題には密接な関係があると多くの国民が気づいている。再生エネ、省エネといった様々な技術に潜在的なメリットがあると理解されつつある。世論は非常に前向きだ。

西村
経済成長と温暖化対策を両立させることは可能か。

小林
環境にお金を使うと経済を悪くすると思っている人は、日本にも多くいる。ただ、日本はこれまで環境対策にお金を使ったが、経済は大きくなった。仏では再生エネへの投資に経済的な抵抗はないのか。

ダナ
仏国内でもある程度の抵抗はある。仏電力公社(EDF)という世界最大の電力会社は原子力が中心だが、今は再生エネにも力を入れている。企業だけでなく社会も移行期にある。一部の人には痛みをもたらすが、多くの人に希望をもたらす。我々はその移行を助ける役割を担う。

高村
あらゆる国がパリ合意を期待している。ただ温暖化交渉はエネルギーや森林の保全、資金、途上国の発展など非常に幅広い内容を含む。一番大きな障壁は、時間が足りないことだ。利害の対立や意見の違いをまとめる知恵をどれだけ出せるかがカギだ。

西村 陽一
朝日新聞社常務取締役編集担当

西村
京都議定書を米国は離脱した。パリ合意ができても、再び離脱しないか。

ザイカル
非常に重要な質問だ。民主党も共和党も、風力や太陽、水力、地熱の可能性を信じている。オバマ大統領の政策の多くはシステムの中に根付いており、それを逆転させるのは難しいと思う。

西村
中国は化石燃料に支えられている。社会や経済の仕組みを変える道筋は?


持続可能な経済成長の新たなパターンを模索する。大気の質や二酸化炭素(CO2)削減も重要だ。加えて、再生エネの開発をもっと早める。それには国際的な技術移転も重要だ。

小林
みんなが力を合わせれば、社会全体で大きな削減を少ない費用でできる。そういう全体の設計を考える時期にきている。日本は自然共生思想を世界に発信できる。お金だけ期待されるのはちょっとさみしい。中身で世界に貢献すればいい。

西村
途上国でも、経済成長の目覚ましい新興国と、海面上昇に直面する南太平洋の島国とでは深刻な違いがある。

ザイカル
パリ合意は、「国々に柔軟性を与える」、「定期的に検証する」、「(京都より)後退しない」、「途上国も動員していく」という一種の実験場になる。交渉の最終段階で、だれがどういう約束をするのか、どういう数字を出すのか、この2点が重要だ。

会場全体の様子

高村
途上国の中でも、排出削減にどう取り組むかで意見が分かれる。(先進国だけでなく)新興国にもより強力な取り組みを求める島国や後発途上国がある一方、先進国の歴史的な責任を強調する国々もある。交渉はまとまりにくいが、途上国の中から(排出量を削減できる)能力と排出量に応じて応分の努力をすべきだという声が出ているのは、合意をつくる上では良い兆候だ。パリ合意では、目標の拘束力や検証の厳しさといった点で差をつけるか、あるいは途上国により柔軟な仕組みを提供するといった方向になるのではないか。

西村
温暖化はビジネスチャンスか。

小林
環境を守る費用は、環境が壊れて失うお金より、はるかに小さい。環境と人間との取引で考えると、人間がもうかるのは当然だが、それを人間社会でビジネスチャンスにすることが重要だ。


中国と日本の環境保護の技術協力は、酸性雨のころから続いており、歴史が長い。近年、環境保護の中国市場は大きくなった。煙霧規制も進み、汚染源を監視する機器などで日本企業の貢献に期待している。省エネ面でも、製鉄、セメント、機械工業の分野で日本から学ぶものは多い。