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06月26日朝日新聞デジタル朝刊記事一覧へ(朝5時更新)

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パネル討論
「マングローブは地球の未来を救うでしょうか」 パネリスト:宮城 豊彦、井上 智美、持田 幸良
コーディネーター:馬場 繁幸

宮城 豊彦
東北学院大学教養学部地域構想学科
教授


井上 智美
国立環境研究所 主任研究員


持田 幸良
横浜国立大学大学院環境情報研究院
教授

地球温暖化の防止に貢献するとされるマングローブ林。津波や高波などの自然災害から、住民や農地を守ってくれるのか。「マングローブは地球の未来を救うでしょうか」と題したセッションでは、会場の参加者も質問にたち、議論した。

横浜国立大の持田幸良教授は、マングローブ生態系には哺乳類や鳥類、爬虫(はちゅう)類、魚類などが含まれることを紹介し、「サンゴ礁や熱帯雨林と同様に世界で最も生産性の高い生態系の一つ」と述べた。会場内では、回されたマングローブの根や種(たね)を参加者が手にとり、感触を確かめていた。

国立環境研究所の井上智美主任研究員は、大気中の二酸化炭素を取り込んで炭素をためることで、地球温暖化防止に貢献する「貯留機能」について報告した。マングローブはこの炭素をためる能力が高いが、森林の年齢である「林齢」によって変わるという。林齢85年のマングローブ林が炭素をためる能力は「林齢5年に比べ、1.7倍高い」と話した。

東北学院大の宮城豊彦教授は、インドネシア西部バンダアチェでは、約100年前に比べて9割のマングローブ林がエビの養殖池などに変わっていたことを紹介。2004年のスマトラ沖大地震・インド洋津波で大きな被害を受けた地域で、シミュレーションによると、「森林が残っていれば最大70%くらいの津波の高さを減らせた」と話した。また、各地で森林が再生した写真も紹介。インドネシアのバリ島では養殖池だった場所が植林で約20年で豊かな森になり、新婚カップルが記念撮影するほどになっていたという。「これから先のマングローブとの良い関係を模索するステージにある」と結んだ。

会場の参加者からは「マングローブは環境的な資源であると同時に観光産業的な側面もある。人の出入りがあってもマングローブは維持できるのか」との質問もあった。西表島ではマングローブツアーの人数制限や観光船の乗り入れ規制があるという。


<コーディネーターから> 急減する面積、見直される価値

馬場 繁幸
国際マングローブ生態系協会 事務局長

マラリアなどを媒介する蚊が多く、不毛の湿地と考えられていたマングローブ林。多くの研究と啓蒙(けいもう)活動の成果だろうか、生物の多様性や、熱帯雨林や温帯林などに比べて高い炭素をためる能力、津波などの防災機能が認識されるようになってきた。スマトラ沖地震の津波などでは、多くの人の命が救われたとの報告もある。

しかし、エビ養殖に転換されたり、工場用地や住宅用地に埋め立てられたりして、その面積は急激に減っている。

マングローブ林を保全、再生して、適切な利用と管理をしていきたい。それは、地球温暖化を抑制し、熱帯の沿岸域に住む人々の命と生活を守ることへの貢献にもつながる。(国際マングローブ生態系協会理事長・馬場繁幸)