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10月17日朝日新聞デジタル朝刊記事一覧へ(朝5時更新)

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パネル討論
「動き出した水素社会 その夢と課題」パネリスト:伊勢 清貴、松本 真太郎、駒田 浩良
コーディネーター:安井 孝之

伊勢 清貴
トヨタ自動車 専務役員


松本 真太郎
新エネルギー・産業技術総合開発機構 新エネルギー部長

トヨタ自動車が燃料電池車(FCV)「ミライ」を2014年末に世界で初めて市販し、「水素社会」への期待は盛り上がりつつある。環境に優しい水素社会の夢と課題を考えた。

トヨタの伊勢清貴専務役員は「CO2(二酸化炭素)の排出がこのまま続けば、2100年には地球の表面温度は3.7~4.8度上昇してしまう」と指摘した。石油などの化石燃料を多く使う社会から、CO2を出さない水素社会への転換が必要だという。

水素は地球上にほぼ無限にあり、化石燃料のように枯渇する心配がない。酸素と反応させて電気を起こすときに水しか出さないため、環境にやさしい。FCVが「究極のエコカー」と呼ばれるゆえんだ。ミライは1台700万円以上するが、政府は約200万円の購入補助を決めた。

ただ、課題もある。水素は、製鉄所などで二次的に生まれたり、石油や天然ガスを変化させてつくられたりしている。だが、水素を多くつくろうと化石燃料を余分に使えば、その分CO2が多く出る。こうした水素を使ったFCVのCO2の排出量は、ハイブリッド車より17%少ない程度にとどまってしまう。

太陽光で起こした電気を使って水を電気分解し、水素を取り出すことができれば、CO2の排出量はない。ただ、コストが高く、国は、こうした水素が流通するのは40年ごろとみる。

一方、福岡市と九州大は、下水の汚泥からCO2をほとんど出さずに水素を取り出すことに成功した。市創業・立地推進部の駒田浩良部長は「全国の下水汚泥で車が動くようになる。エネルギーの『地産地消』にもつながる」と語る。汚泥からの水素を使った水素ステーションの整備には、国も助成金を出している。

日本は石油などのエネルギー資源に乏しい。それでも、新エネルギー・産業技術総合開発機構の松本真太郎・新エネルギー部長は「水素の効率的な貯蔵法など、必要な技術を持っている」と日本ならではの強みがある、と言う。伊勢氏は「水素社会は長い長い道のり。ものすごい時間がかかる。下火にならないよう、国民のみなさんにも支援をお願いしたい」と話した。


駒田 浩良
福岡市経済観光文化局
創業・立地推進部長


<コーディネーターから> 水素で描く夢、ニーズの開発課題

安井 孝之
朝日新聞編集委員

水素は地球上に最も多く存在し、水を構成する主要な元素。なのに私たちは身近な存在として意識し、使ってはこなかった。ところが21世紀に入り、家庭用燃料電池(エネファーム)やFCVが市販され、水素利用が現実のものになってきた。

水素原子は水をはじめ、色々な物質に含まれる。福岡市では、汚泥という厄介者が資源に生まれ変わり、FCVなどに使われている。水素は資源のない日本で、地産地消型の資源になり得る潜在力を持つ。

課題は経済性だ。水素が様々な分野で使われるとコストは下がる。水素社会の実現には、ニーズ開発も重要だ。(編集委員・安井孝之)