メインメニューをとばして、このページの本文エリアへ

10月16日朝日新聞デジタル朝刊記事一覧へ(朝5時更新)

新着記事一覧へ

パネル討論
「ここまで省エネ! スマートシティ&ハウスの住み心地」パネリスト:山村 真司、有吉 義則
コーディネーター:多賀谷 克彦

山村 真司
日建設計総合研究所 理事 上席研究員


有吉 義則
大和ハウス工業 執行役員 総合技術研究所長 兼 住宅事業推進部・商品開発部 統括部長


多賀谷 克彦
朝日新聞編集委員

自分の家にある機器で電気をつくり、賢く蓄えて、省エネを実現する。そんな「スマートハウス」や「スマートシティー」は日本でも当たり前のくらしの姿になるのだろうか。

大阪府堺市に2014年2月に完成した「SMA×ECO TOWN晴美台」。スマートハウス65戸が並ぶこの約1.7ヘクタールのエリアには、太陽光発電設備や大型の蓄電池、電気自動車(EV)の充電器がある。年間では、消費電力量よりつくり出した電力量のほうが約1割多いと試算されている。

スマートシティーを取り上げたセッションでは、晴美台の開発を手がけた大和ハウス工業の有吉善則執行役員が、ここに住む人たちへのアンケート結果を披露した。「無理に節電している意識があるかどうか」を尋ねた問いには、回答した36人すべてが「無理していない」と答えたという。スマートシティーでのまちづくりとしては、「若い人が高齢者をサポートし、コミュニティーをきちっとつくることが重要」と話した。

日建設計総合研究所の山村真司理事は、都市の環境配慮などが専門だ。「将来の暮らしにとって、非常に有効な取り組み」とする一方、「自分たちが省エネしてもういいや、とはいかない時代になっている」と指摘した。

エネルギーの需要をみると、35年の日本は11年と比べて0.96倍に微減するが、都市化が進む中国は1.5倍、インドでは2.1倍に増える見込み。こうした新興国が引っ張り、世界全体では1.3倍に増えるという。

だからこそ、展開は日本にとどまるのではなく、新興国にもそのニーズがあると考える。山村氏は「日本はどうしてもハイコスト、ハイテクノロジーのものを買ってと言ってしまうが、リーズナブルなものであれば十分喜んでくれる」と話す。新興国のエネルギー問題はますます深刻になるとみる有吉氏も「しくみは持っていける」と明言した。

今後、スマートハウスやスマートシティーが普及していくと、どんな社会になるのか。

山村氏は「すべての分野で高効率にして、余裕のない社会にするという誤解がされているかもしれない。でも、高い効率を求めながらムダも(一部で)認め、それを技術で支えてあげる社会になる」と見通した。


<コーディネーターから> 都市が抱える課題、幅広い連携必要

東日本大震災をきっかけに、このテーマへの関心が高まった。災害時の電力をどう確保すればいいのか。原発に頼る社会は持続可能なのか。

答えの一つが、自らエネルギーをつくり、蓄える住宅、街区だった。震災から4年、各地のプロジェクトは、実証実験から実用化の段階に入っている。

今回の議論は、その先を探ることが狙いだった。山村真司さんは原点に立ち返り、世界的な人口増、都市集中という課題を克服する方策としての有効性を説いた。有吉善則さんは消費エネルギーと自らつくるエネルギーが差し引きゼロの住宅を紹介。このテーマの推進には官民の幅広い連携が欠かせないと言う。都市の課題は、健康維持、高齢化社会への対応と広がる。スマートシティーの課題も同じだ。(編集委員・多賀谷克彦)