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06月27日朝日新聞デジタル朝刊記事一覧へ(朝5時更新)

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パネル討論
「温暖化で農産物の旬や産地はどう変わる?」パネリスト:杉浦 俊彦、東海林 邦子
コーディネーター:大村 美香

杉浦 俊彦
農業・食品産業技術総合研究機構
上席研究員


東海林 邦子
ふじえん菜実季 店主

地球温暖化で農作物の旬や産地、私たちの食卓はどう変わっていくのか。農業と気象の関係を研究する農業・食品産業技術総合研究機構の杉浦俊彦・上席研究員と、東京都中央卸売市場で青果流通に長年携わった経験がある青果店「ふじえん菜実季」店主の東海林邦子氏が語り合った。

杉浦氏は、極端な高温になる年が増え、農作物に被害が出ることが多くなっていると説明した。コメには、穂が出た後に高温が続くと白く濁った「白未熟粒」が発生している。果物などでは、色づきが悪くなったり日焼けしたりする事例を紹介した。冬の野菜も、気温の上昇で育つのが速くなり、全体の収穫時期が早まっているという。

将来的には高温に耐えられるコメの生産がコシヒカリ以上に増え、モモ、リンゴなど果物の生産地が北上すると予測する。杉浦さんは「アボカド、ライチといった亜熱帯性の作物を積極的に導入する必要が出てくる」と指摘した。

東海林氏も、天候不順で野菜の出荷が集中したり不足したりして値段が乱高下することが増えたという。「卸売価格がそのまま店頭に反映されないよう、高値の時は原価すれすれの値付けをし、その分安値の時に若干調整している」と小売業の苦労を明かした。

夏の野菜の産地が、本州よりも北海道が中心になっていると実感するほか、夏場は、夕方まで気温が高すぎて店の外に商品を並べられず、「八百屋にとっては大問題」と語った。

消費者に向けては「外観を重視し過ぎると農業を営む環境が厳しくなる。味重視で食べていただきたい」と東海林氏。杉浦氏も「果実は高温だと酸が適当に抜けて甘く感じられる。温暖化時代に消費者が適応していく意味でも、多少色が悪くてもおいしいことを知ってほしい」と訴えた。


〈コーディネーターから〉 旬のもの食べて生産者の負担軽減

大村 美香
朝日新聞編集委員

過去100年で日本の平均気温は1度上がり、極端な高温の頻度が増えた。温度に敏感な植物への影響は大きく、農作物に被害が出ている。生産者は労力とコストをかけて対策をしなくてはならず、大きな負担になっている。

一方で、寒い時期がおいしいホウレンソウを夏にも求めるなど、季節を問わず一年を通じて同じものを食べたがる傾向は強まっている。農業技術の発展で生産が可能になってはいるが、度を越した暑い夏や暖かい冬、天候不順が多発する中で、こうした食べ方が、農業現場へ負荷をさらにかけていないだろうか。

パネリストは「旬の野菜や果物を食べてほしい」と口をそろえた。私もそう思う。田畑で起きていることに、食べる人も関心を持つことが大切だと感じている。(編集委員・大村美香)