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06月27日朝日新聞デジタル朝刊記事一覧へ(朝5時更新)

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パネル討論
「100年おいしい水 森から都市への水循環」パネリスト:高橋 裕、大芝 正和、村瀬 誠
コーディネーター:伊藤 智章

高橋 裕
東京大学 名誉教授


大芝 正和
山梨県北杜市 副市長

大洪水や渇水、工場の過剰な水利用など、水をめぐる問題はいまも尽きない。水を大量に使う都市部と、水源の森林を養う山村。持続的な「水の循環」に向けてどう協力するべきか、専門家らが意見を交わした。

東京大名誉教授の高橋裕氏は「1990年代ごろから『日本の水循環がおかしくなった』との問題意識を、学者や行政が持ち始めていた」と指摘した。地下水をくみ上げすぎて地盤沈下が起き、農地の宅地化で都市水害が起こる現象が全国で頻発。こうした問題に取り組むためできた「水循環基本法」は、水資源の重要性が初めて法的に位置づけられたと評価した。

山梨県北杜市の大芝正和副市長は、企業から協力金を毎年集め、4千万円を里山の整備などに充てている基金を紹介。市では日本のミネラルウォーターの3割が生産されており、「ミネラルウォーター税」を企業に課す構想もあったが、頓挫した。大芝氏は「結局、税金より寄付のほうが企業のCSRになる。企業とは『明るい癒着』が大事」と述べ、会場を沸かせた。

雨水利用装置の普及に取り組む天水研究所の村瀬誠代表は、東京23区と周辺の年間降水量が同じ地域の水の消費量に匹敵すると指摘。「都市は膨大な雨水を捨ててきた。流せば洪水、ためれば資源。上流にダムを造るだけではなく、自らまかなう発想の転換が必要」と述べた。


村瀬 誠
天水研究所 代表取締役


<コーディネーターから> 水循環の回復、始まったばかり

伊藤 智章
朝日新聞編集委員

1000。都内にこれだけ雨水利用ビルがあるという。「アジア最大です」。元東京都墨田区職員として普及に尽くしてきた村瀬誠さんが話すと、ため息が漏れた。

水は蒸発し、雨や雪になり、地表を流れ、浸透し、海に至る。その自然の水循環を私たちは、目先の利害のために壊してきた。国内最大のミネラルウォーター生産地の山梨県北杜市でさえ、森林が荒廃する。

地表をコンクリートで固めた人工都市で、ようやく循環を取り戻す動きが始まったわけだ。頻発する内水氾濫(はんらん)の対策は、莫大(ばくだい)なカネをかけ、下水管を太くすることでは、追いつかない。ローテクのようで、雨水をため、利用することが、暮らしを守ることになる。

水循環基本法が施行されたとはいえ、会場質問で、水に関する「縦割り行政」もやり玉に挙がった。身近なことから取り組みたい。(編集委員・伊藤智章)