メインメニューをとばして、このページの本文エリアへ

10月20日朝日新聞デジタル朝刊記事一覧へ(朝5時更新)

新着記事一覧へ

パネル討論
「漁業国日本の凋落とサカナの危機、海をどう守る?」 パネリスト:小松 正之、生田 與克、北田 桃子、平 将明
コーディネーター:高橋 真理子

小松 正之
東京財団 上席研究員


生田 與克
シーフードスマート 代表理事


北田 桃子
世界海事大学 助教授

世界屈指の漁業国だった日本の漁獲量は、最盛期の3分の1までに減った。漁師の高齢化や後継者不足も嘆かれる。日本の浜に、再びにぎわいは戻るのか。様々な立場で漁業を見つめる4人の専門家が語り合った。

衰退する日本と対照的なのが、ノルウェーだ。漁業が成長産業といわれる。世界海事大学(スウェーデン)の北田桃子助教授は「ノルウェーもかつて、魚が減ってもとり続けた」と語り、負の連鎖を断った歴史を紹介した。

ノルウェーは漁師のライセンスを減らす一方、漁船ごとに漁獲量を割り当てる制度を整えた。割当量は、科学的に資源を守れる量に抑えられている。その結果、「ほどよくとって利益をあげる漁業」になり、1990年代後半から補助金がほとんどいらなくなった。

一方、東京財団の小松正之上席研究員は突出して悪化する日本の現状を示すデータを次々示した。漁業・養殖業生産量は80年代をピークに急減。生産量トップ10カ国のうち減ったのは日本だけだ。他国は養殖を大きく伸ばすが、日本は養殖も減少傾向。漁業権を地元漁協に与え、他の参入を許さないため改革が進まないと訴えた。

一般社団法人シーフードスマートの生田與克代表理事は最近、東京・築地市場に大きな魚が並ばなくなったと印象を語った。「とり過ぎは良くないと思っていても、漁師はとるのが商売だ。みんながとるのを我慢するためには、政治の力が必要だ」と力説した。

平将明内閣府副大臣は「いち国会議員として」と断りながら、政策の誤りを認めた。水産庁は、漁獲規制は今の延長上で対応可能で、政策転換の必要はないという姿勢だという。副大臣として国家戦略特区を担当した平氏は、養殖業や農業の生産性を向上させる仕組み作りに取り組んできた。資源が回復するまで支援して、もうかったら返してもらうような補助金を創設したいと話した。

小松氏は「大賛成」と応じ、「現政策の延長はダメ」と断言しつつ、エビの個別漁獲割り当て制度を採り入れた新潟県のように、政治、行政、現場のそれぞれにリーダーが必要だと指摘した。

議論は日本の国民性にも及んだ。生田氏は「マグロ漁が規制されれば食べられなくなる、と大騒ぎする。本当は、規制すれば将来も食べられる」と、発想の転換を求めた。北田氏は「漁獲を絞るのは心理的に受け入れがたいかもしれないが、必ず効果はある。感情ではなく、理性で行動してほしい」と訴えた。


平 将明
内閣府副大臣、衆議院議員


<コーディネーターから> 「とり過ぎ防ぐ規制、日本も創るとき」

高橋 真理子
朝日新聞編集委員

二つの事実が明らかになった。日本の漁業は生産量を大幅に減らし、行き詰まり感があること。逆に世界の漁業は生産量を伸ばし、「もうかる漁業」に変身を遂げつつあることだ。

ノルウェーでなぜ漁業改革ができたのか。「ノルウェー人は科学的研究と自然に敬意を持つから」「北欧では、規制は弱者を守るためという考えが共有されている」という北田さんの指摘が胸に残る。

フロア発言者の末永芳美・東京海洋大教授は「消費者は質の良い魚を求めており、直販所はにぎわっている」と、漁師が希望を持つ一面に言及した。

とにかく、とり過ぎは防ぎたい。科学的データをもとに合理的に規制をかける漁業が世界標準なのだと思う。日本の漁業にとって「良い規制」を創り出すときだ。(コーディネーター 編集委員・高橋真理子)