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07月15日朝日新聞デジタル朝刊記事一覧へ(朝5時更新)

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パネル討論
「豊かな水が社会を支える」
日本の技術、どう応用するかアハメド・カリール、滝沢智
コーディネーター:荻野 博司

■島国モルディブに命の水を
「豊かな水が社会を支える」と題したセッションでは、水不足に悩むモルディブの現状と、日本の技術をどのように応用できるかが話し合われた。

モルディブ共和国のアハメド・カリール駐日大使は、海抜が1・5メートルしかないモルディブでは、温暖化による海面上昇で土地が失われているだけでなく、地下水に海水が入って飲み水が減っている、と訴えた。

「水不足は、モルディブを支える観光業にもマイナスの影響を及ぼしかねない」と危惧する。

これに対し、東京大大学院工学系研究科の滝沢智教授は、水が豊かで、こうした問題とは縁がなさそうに見える日本のなかでも、かつて沖縄などでは似たような水不足問題があったと指摘。

「様々な形態のダムを造ったり、水処理の技術も使ったりして、渇水問題を改善させてきた。この経験を共有したい」と話した。

アハメド・カリール

カリール大使はモルディブでは大気汚染が進んでいるため、雨水も安全でないと説明し、「将来は海水を淡水化するしか方法はないだろう」と語った。

モルディブにとっては淡水化施設の整備をどう進めるかが死活問題だ。

ふつう、淡水化の施設は大規模なものを1カ所に整備することが多い。しかし、小さな島々が点在するモルディブのような島国では、小規模で分散型の施設が必要だ。離島が多い日本にはそうした小規模施設整備のノウハウがある。

ただ、小規模施設の整備は可能でも、実際に動かすには一定の運転技術が必要だ。モルディブの島それぞれに小さな淡水化施設を置き、同時に動かしていくには、運転技能を持った専門家を数多くそろえる必要が出てくる。小国のモルディブにとっては、そうした人材の確保が困難だ。

それだけに滝沢教授は「遠隔操作で制御する技術も求められている。現地のニーズに耳を傾けながら、日本のIT技術も使って援助することが、ひいては日本のプレゼンスを高めることになる」と話した。

 

滝沢智

■コーディネーターから 技術向上は私たちのためにもなる
モルディブの首都マレに育ったカリール大使のスピーチは、随所に日本への謝辞と期待がちりばめられた。環境の危機にさらされるインド洋の島国にとって、潤沢な資金とすぐれた技術をあわせ持つ国の存在感がいかに重いか。話を進めるうちに腑(ふ)に落ちた。

2004年末に起きたインド洋大津波は平均海抜1・5メートルほどのマレ島を襲った。島の3分の2が水をかぶったが、日本の援助で築かれた防波堤が大打撃を食い止めた。「海が見えなくなると文句を言っていた市民も、今では心から感謝している」という。

そして、命の水。日本の技術を集めた海水淡水化プラントが支える。

「遠い小国の話では終わらない」。滝沢智教授に釘を刺された。日本には7千の島があり、うち400余に人が住む。モルディブが求める技術を磨くことは私たちの暮らしにもつながる。