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朝日地球環境フォーラム2009

EV普及狙い横浜で実験 米企業が充電池交換システム

[English]

2009年6月12日

写真同社が公開した充電池交換システム(Image Above:Better Place’s battery switch technology for EV)

写真急速充電装置(Image Above:Better Place’s charge spots for EV)

写真米ベタープレイス社のシャイ・アガシCEO(Image Above:Mr. Shai Agassi, CEO of Better Place Co.)

 電気自動車(EV)の充電基盤を提供するベタープレイス(本社・米カリフォルニア州)が、横浜市の山下公園近くで、EVの駆動源となる充電池の自動交換システムを公開中だ。環境省によるEV普及事業に参加する形で6月20日まで、同社としては世界初の公開実験に取り組む。

 電池交換は1分余り。EVの下部に取り付けた電池を自動リフトが取り外し、太陽光発電でフル充電された電池を取り付ける。

 ドライバーは車から降りる必要がなく、ギアをニュートラルにして座っているだけ。新しい電池に交換すれば、走行距離を100キロ以上延ばせるという。

 今回の実験では日産自動車のEVを使い、シャープが太陽光発電システムを提供した。

 実験場には、パーキングメーター程度の大きさの急速充電装置も4台設置。電池を取り外せない固定式EVに対する充電実験もできる。

 ベタープレイスはEV普及のネックが電池とEVが高価なことだとみて、電池所有の負担をかけないサービスを提案中。つまり、消費者はEVを購入し所有するが、その駆動源・充電については、電池を含む利用契約をベタープレイスと結び、走行キロやサービスに応じた料金を毎月払う仕組み。複数の月ぎめサービスメニューを提供する携帯電話に似た方式だ。

 同社はイスラエルで現地政府や主要企業と組み、充電基盤整備を進めているほか、米カリフォルニア州、デンマーク、オーストラリアなどでも整備計画を発表した。

    ◇

 5月14日、横浜での公開実験に合わせて来日したシャイ・アガシ最高経営責任者(CEO)に戦略や展望を聞いた。

 ――ベタープレイスのアイデアは非常に興味深い。ただ冒険だとも言えます。成功しますか。

 「いまの石油、自動車業界のビジネスモデルの方が失敗する」

 「どんな車が望ましいかは、油価によって変わる。原油が安ければ、みんな大きい車を買う。高ければ小さい車。車の寿命は8年だ。油価が1年で乱高下するのに、どうやって8年先の車を設計するのか。自動車業界と石油業界はもう、持続可能な方法で相互にうまく機能しえない」

 ――多額を必要とするベタープレイスの事業は、成り立ちますか。

 「私たちの投資額は、一国が原油にかける額の1、2カ月分にすぎない。果たして社会は毎月毎月、原油コストを負担できるのだろうか。道路、列車、ガソリンスタンドなど、ずっと背負わなければならないコストこそ問題じゃないか。それが地球を破壊し、経済を破綻させる。もう耐えられない。地球、貿易収支、政治的安定性などへの影響を考えると、原油は世界にとって大きな不安定要因だ」

 ――日本の環境省から、EV普及のためのインフラ整備に対し、ゴーサインがでたら、どのように電池交換ステーションや充電スポット(急速充電装置)を増やしますか。

 「私たちがどんな車種をターゲットにするかによる。たとえばタクシーを選ぶなら、電池交換ステーションだけでいい。タクシーは充電のためにわざわざ止まったりしないから。都心や街路脇の地下に交換ステーションが増えれば増えるほど、充電スポットはいらなくなる」

 「だがもし、政府用車を選ぶなら、政府内の駐車場にたくさんの充電スポットが必要となる。充電だけなら、とても小さな機器で済む。政府がどんな車種を電化の対象にするのかによる。それで私たちは、政府の方針を待っている」

 ――電池交換ステーションや充電スポットは、ガソリンスタンドやコンビニエンスストアのようなフランチャイズ形式に?

 「現時点では考えていない」

 ――直営ですか。

 「そうだ」

 ――ベタープレイスの計算では、電気自動車を1キロ走らせるのに5セント(約5円)しかかからないと言います。それは目標ですか。

 「いや、現時点でのコスト。私たちの目標は1セントだ」

 ――すでに提携している日産自動車以外に、ほかの日本メーカーと交渉していますか。

 「交渉という言葉は大げさすぎるが、世界中のあらゆる自動車メーカーと話をしている。どのメーカーも今は非常に業績が厳しい。業界に新しいコンセプトを持ち込むには厳しすぎる。ゴーンさん(日産自動車の最高経営責任者)は07年に決断したが、それは業界が崩壊する前だった。資金をつけ、チームをつけ、(電池交換が簡単にできる電気自動車の)開発に乗り出した。その結果、日産は実質的に2年の先行利益を得る。これがゴーンさんの展望だ。トヨタもホンダも追いつくだろうか。もちろんだ」

 ――でもEVが次世代の主流になるかどうかは分かりません。

 「私には分かる。科学の視点で考えればいい。日産、トヨタ、ホンダのいずれもすばらしい車をつくっているが、エネルギーの視点が欠けている」

 「私たちが今日、車を動かすのに使っているのは凝縮された太陽の力。つまり数百万年前にこの惑星に届き、原油として凝縮されたものだ。それを私たちは掘り出している。300万〜400万年かけてできた原油を、100年で掘り出してしまったのだ。そして残りの半分は50年かそこらで掘り尽くそうとしている。原油はこの惑星上で貴重な液体であるのに、火をつけて燃やしている。馬鹿げている」

 「科学的にもっとも意味があるのは、きょう届く太陽の力を電子に換え、車の動力にすることだ。分子を介さない。科学的にもっとも効率的な方法だ。水素だと分子。電子より重く、扱いにくい。まず問うべきは基礎的な科学。何が一番いいのかと。答えは電気だ」

 「消費者の立場でも問うてみよう。ガソリン車より便利で安くできるかと。できるのであれば、それが未来だ。電池も他のものもひっくるめ、EVを1キロ動かすのに5セントなら、ガソリン車のコストに見合う。地下から掘る原油はもっと高くなる一方で、私たちがつくるものは大量生産になれば安くなる。だから2020年のコストは、1キロ走行あたり1セントとみる」

 「科学と経済が解決策を示していれば、それが証拠だ。不可避のものだ。こういう不可避のものに賭ける人は、常に勝利する」

 ――日本メーカーが勝者になるでしょうか。

 「車と電池をあわせて2万5千〜3万5千ドル。そういう車が日本から輸出されるのか、それとも日本へ輸入されるのかという問題だ。リチウムイオン電池市場は今後の10年間で、毎年10倍ずつ大きくなると言われる。この市場拡大が日本で起きるのか、韓国や中国で起きるのかということ」

 「日本は1位であり続けるべきだ。それが日本経済の基礎だから。この種の技術、開発は日本でやるべき。中国はEV1台に9000ドル(約90万円)の補助金を出しているという。もし日本が補助しないなら、あっという間に中国メーカーが、日本勢より多くのEVをつくるようになる」

 ――政府の責任は重い?

 「日本政府はすばらしいビジョンを持っている。富士重工やベタープレイスを集め、電池交換ステーションを横浜につくった。世界中からエンジニアが見に来ている。日本企業の人なら電車で来られる。すばらしい初動だと思う。政府はみんなを励まし『我々はこれをやり遂げる』と言うべきだ」

 「中国政府は立ち上がった。私は2週間、中国の会議に出ていたが、政府の人が立ち上がり、『EVを推進することにした』と言った。聴衆の中に自動車メーカー2社がいて『これからですか』と聞いた。すると政府の人は『いえ、すでに決めました』と。『えっ、いつ?』『今だ』と。中国が決めたということは、5年間温めていたということ。日本にとって、熟慮している余裕はない」

 「自動車業界で何か根本的なものが壊れているとき、企業の最高経営責任者のレベルで無理なら、国のマクロ経済のレベルで考えなければならない。政府はある特定の産業については、積極的な行動を起こさなくてはならないのだ。関与して方向づけをすることこそ、政府の責任だ。その点で日本政府、まずは環境省だが、すばらしい一歩を踏み出した。ただ、次がどういうステップになるかが問題だ」

 ――環境省と経済産業省の考え方が違い、なかなか日本政府が一枚岩というわけにはいかない。

 「シンプルなのがいいと思う。どちらの省も、日本が成功することを願っている。両省が一緒になって、日本の未来にとって最善の策を考えれば、環境と経済の間に矛盾はない。経済にとって最善なのは、環境の立て直しを好機ととらえること」

 ――12月にコペンハーゲンで第15回気候変動枠組み条約締約国会議(COP15)が開かれます。どんな国際合意を期待しますか。

 「テーブルにのせるべきは経済的な問題、つまり環境をチャンスにする問題だ。私は資金を集め、基金にする時間的な余裕があると思う。CO2排出権を売り買いするための基金ではなく、もっとも利益の上がるCO2削減事業に投資するための基金だ」

 「私たちは利益を上げるというだけでなく、この地球上のCO2を削減する事業をやっている。でも市況がよくないから、資本市場で資金を見いだせない。だからこそ、利益の上がる解決策を支えるような基金をつくり、資金を貸し出すのだ。1トンのCO2を減らす単位で換算し、20年で返済する人より2年で返す人に貸せば、私たちはもっと多くの事業をできるではないか。こうして優先度の高い事業から始める。もっとも利益の上がる事業を先にやる。事業者は返済するから基金は膨らみ、新技術が出て、もっと利益の上がる事業ができる。こういった仕掛けこそ、いま必要だ。経済か環境か、などと言ってはいられない。二律背反ではなく、二つを一緒にして解決しなければならない」

(聞き手・山本晴美)

※一問一答の全文は英語で掲載しています。

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