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朝日地球環境フォーラム2011

「ポスト福島事故」、世界はどう変わる?

朝日新聞編集委員 竹内敬二

2011年7月1日

写真拡大スコットランドのオークニー諸島の風景

写真拡大ホワイトリー風力発電所。欧州最大という。グラスゴー近郊

 英国北端にあるオークニー諸島を訪れた。北緯59度。夏の今は、午後10時でも夕暮れだ。

 時差ぼけの頭で宿のバーに座っていると、宿の主人が「津波と原発事故はどうだ」と話しかけてくる。日本人と見れば多くの人がこの話をする。

 「悲惨だなあ。でも原子力は必要だと思うよ。化石燃料はどんどん高くなるだろうし、健康にも悪い。危険だが、フランスなんかはうまく使っているじゃないか」。「原子力をどうするか」は、だれでも、どこの国でも「福島後」の大問題だ。

 英国では、国とスコットランドとの方針がすれ違っている。

 スコットランドの「首相」のような立場にあるサモンド首席大臣は、5月、「2011年に電力の31%を自然エネルギーにする目標は達成した。2020年までに80%だった目標を100%に上げる」と述べた。

 「100%」とは、火力発電などがあっても、スコットランドの需要分は風力などの自然エネルギーで発電するということだ。余った電気は輸出する。スコットランドでは原発の建て替えは認めない。

 この「脱原発、自然エネルギー大推進」の方針で、注目を集めているのがオークニー諸島だ。大西洋と北海の間にあり、強い潮流と波にさらされている。世界の多くの企業が潮流発電と波力発電の設備をここに設置し、海洋エネルギーの実験センターになっている。

 一方、英国政府の気候変動委員会(CCC)は5月、エネルギー政策の評価報告書を発表した。内容は「2030年までに15基の原発を建設する。30年の発電を原子力40%、自然エネルギー40%、天然ガス発電5%にする。残り15%は二酸化炭素の地下貯蔵(CCS)でかせぐ」などだ。

 「福島後に原発重視策」と話題になった。ロンドンでCCCのケネディー委員長に聞くと、「福島事故の原因は強い地震、高い津波などだ。英国の原発計画には影響しない」という。「しかし、英国では世論の反発も強いと思いますが」と聞くと、「原発なしで、どうやって安く二酸化炭素を減らすのか」と強い調子で答えた。

 自然エネルギー、発電コスト、二酸化炭素削減、世論。世界の縮図のような英国の議論はまだまだ続くだろう。

 福島後の各国の反応はさまざまだ。ドイツは「22年までの原発全廃」を決めた。緑の党のトリッティン元環境相は、「自然エネルギーを増やしてきたから脱原発ができる」と強調する。10年前のドイツでは自然エネルギー発電が4%だったが、昨年は17%だ。

 スイスも現在5基ある原発を2034年までに全廃する。イタリアは国民投票で、原発の凍結続行を確認した。

 しかし、中国は「日本で重大な事故があったが、原子力開発を止めることはできない」との方針だ。

 米国はどうか。政府は原発の新規建設を支持するが、福島事故以前から、電力会社の動きは鈍い。風力や天然ガスの発電所より、建設コストがかなり高くなっているからだ。米国では、05年ごろに「原子力ルネサンス」という言葉ができたが、その勢いはない。

 どこの国でも、原子力政策は変わりにくい。原子力へ踏み出し、時間が経つと、社会全体が原子力を支える体制になるからだ。

 しかし、政策を変えうるきっかけとしては、福島事故は最大級の衝撃だろう。世界をどう変えるか。そして日本をどう変えるか。その議論もこれからだ。

    ◇

 竹内敬二(たけうち・けいじ) 朝日新聞編集委員(環境、エネルギー担当)。1980年入社、科学部記者やロンドン特派員、論説委員として、地球温暖化の国際交渉やチェルノブイリ原発事故、各国の自然エネルギー政策を取材。今は福島原発事故後の日本のエネルギー政策が最大の関心事。

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