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幻の「国鱒」標本あった 確実な雌は初 京大博物館

[掲載] 2004年4月24日

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 「国鱒(くにます)一匹、米一升」と言われた秋田県・田沢湖特産の幻の高級魚クニマスが、60年余り前の絶滅後も京都で眠っていた――。京都大総合博物館にあった標本9匹を、秋田県水産振興センターが鑑定した。日米で8匹が知られていただけだったのが一気に倍増したうえ、卵を持ち確実に雌と分かる標本は初めて。謎が多かったクニマスの解明が進みそうだ。同館は24日から標本の公開を始めた。

 クニマスは、1940年、水力発電などのために玉川の水が田沢湖に導入されたことで絶滅した。玉川上流の玉川温泉(強酸性泉)の水が田沢湖に流れ込むようになったためだ。

 各地に放流用に受精卵を送った記録があることに望みをかけ、田沢湖町観光協会が95〜98年、最高500万円の賞金つきで生き残りを探したが、見つからなかった。これまで、標本が秋田県立博物館など同県内に5匹、米国に3匹知られていただけだった。

 京大総合博物館の中坊徹次教授(魚類学)によると、今回の標本は、クモ学で知られる故・岸田久吉博士が、秋田県内で中学教師をしていた1915〜18年の間に採取し、日本の淡水生物学の祖とされる故・川村多実二京大教授に贈ったとみられる。

 「クニマス百科」という著書もある同センターの杉山秀樹・内水面利用部長がこれらをX線撮影し、2匹は卵を持つ雌であることもわかった。杉山部長は「形も色も良く保存された標本が、雌を含めこれだけの数あって驚いた。これで、分類上の位置づけもはっきりするだろう」と期待する。

 10代のころクニマス漁を手伝っていた「田沢湖に生命(いのち)を育む会」相談役の三浦久兵衛さん(82)も、この標本を目にして「生きていたときの姿に近く、網をあげるとクニマスがきらきら光った当時の光景を思い出した」と喜んでいる。(杉本潔)

  ◇

 <滋賀県立琵琶湖博物館の川那部浩哉(かわなべひろや)・館長(魚類生態学)の話> クニマスは、日本の淡水魚で絶滅したことがはっきりしている3種類のうちの一つで、謎が多い。分類や生態を調べるにはまとまった数の標本が絶対必要で、今回の9匹は大変貴重だ。

 

 <クニマス>体長約30センチで、ヒメマスに似るが体色は黒っぽい。肉は白身で淡泊。田沢湖(日本最深の423メートル)の150メートル以上の深部で生活したり、産卵の最盛期が、他のサケ・マス類が秋なのに対し2月だったりと、特異な生態を持っていた。このため独立の種とする見方がある一方、ベニザケの亜種(ヒメマスはベニザケの陸封型)との見方も。

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