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2012年1月16日1時4分
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風レンズ風車発電に熱視線 「福岡発の新技術」実験中

 風車のまわりにリング状のカバーをつけた「風レンズ風車」が注目を集めている。弱い風でも効率的に発電できるとされ、開発した九州大は福岡市と共同で昨年12月から博多湾で洋上発電の実証実験に乗り出した。「福岡発の新技術」との期待がふくらむが、発電装置としての「実力」が見えてくるのはこれからだ。

 細い支柱の上で白いリングに囲まれた小ぶりな羽根がくるくる回る風レンズ風車。かざぐるまや目玉を思わせるユニークな形には、レンズが光を集めるように風を集める工夫が凝らされている。

 開発したのは、九大応用力学研究所の大屋裕二教授ら。羽根の周りのリング状のカバーで発生する風の渦で局所的に気圧が下がり、風車に当たる風速が増すしくみだ。風はカバーの狭い方から広い方へ流れる。普通の風車と比べ、2〜3倍の発電量が期待できるという。

 弱い風でも効率よく発電できる機能に、福岡市が注目した。強い風が吹く場所が少なく風力発電には不向きとされてきた。2009年、博多湾沿いの公園2カ所に出力3キロワットを計4基設置。さらに南区の油山牧場に出力5キロワット1基を新設し、今月から運転を始めた。

 昨年12月、九大と福岡市は東区の海の中道沖で、出力3キロワットの風車2基と六角形の浮体(直径約18メートル)を使った洋上発電の実証実験を始めた。大屋教授は「太陽光発電や波力発電など多目的に使う『エネルギーファーム』を実現したい」と夢を語った。

 洋上風力発電は日本の沿岸で潜在量が多く、将来の自然エネルギーの本命とも言われる。その先駆けとなる実験だけに全国的に注目され、国会議員の視察団も訪れた。

 福島第一原発事故の後、原発などの大規模集中型電力システムから、自然エネルギーを生かした小規模分散型への転換が叫ばれ、福岡で開発された風レンズ風車への期待は高まるばかり。ただ、その実力は未知数の部分が多い。

 まず、設置場所で期待通りの発電量を出せるのか、まだ確かめられていない。

 市によると、09年設置の4基は、電気を蓄電池にためてから街路灯などで自家消費する方式。蓄電池が容量いっぱいになると発電しなくなるため、発電量は目標の3分の1程度。1基は羽根が突風で壊れたため、強風時は風車を止めたことも影響している。

 今月運転を始めた1基は電気を九州電力の送電網に流す方式のため、年間発電量を把握できる。目標を下回れば九大側に改良を求める考えだ。

 コストも高い。5キロワットの風車の設置費は750万円で、同じ出力の太陽電池の約2.5倍。カバーの重さに耐える支柱が必要なためで、市は軽量化や量産化によるコスト減を九大側に求めている。

 世界的にみて、風力発電は自然エネルギーの中でも事業化が進み、発電コストも安い。主な理由は大型化。九州でも出力1500キロワット以上の大型風車が多数、商業運転中だ。一方、風レンズ風車は昨年、出力100キロワットが九大伊都キャンパスに完成したばかり。大屋教授は、小型風車での普及と大型化との両にらみで実用化を狙うが、いずれも開発途上だ。

 洋上発電実験で浮体の開発を担当した経塚雄策九大教授は「原発事故後は期待感が大きくなりすぎた」と戸惑いを隠さない。市の担当者は「まだ普及可能性を探る段階。この1年で発電量が見えてくる。結果がよければ次のステップに進みたい」と話す。(安田朋起)

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