「パフカル」で緑化された商業ビル・東京ミッドタウンの屋上=サントリー提供
土を使わない苗床「パフカル」=サントリー提供

緑地が少ない都市部の気温が上昇する「ヒートアイランド現象」を和らげる効果を期待して、ビルの屋上を緑化する企業が増えている。だが、雨で土が流出し、重量がかさむことが問題だった。サントリーは土を使わず、軽くて植物もよく育つ苗床を開発した。(本田靖明)
苗床の名称は「パフカル」。高さ約12センチの鉢の形をしており、スポンジ状で弾力がある。ウレタンをベースにした原料液に、マイクロメートル(1メートルの100万分の1)単位まで粉砕した数種類の木くずなどを混ぜて膨らませる。土は使わない。02年から開発を進めてきた。
これまで屋上緑化には「雨で土が流れたり、風で飛んだりして困る」「建物が土の重みに耐えられないのではないか」といった課題があった。
パフカルは土のように崩れることがなく、重さは土の約半分程度と軽い。内部に多くの気泡があり、根の生育に必要な空気が保たれるため、植物の成長も早いという。実験では、パフカルで育てた植物の成長(重量)は一般的な培養土の約2倍、根っこなら約5倍に達した。
専用トレーにパフカルを並べ、給水管を配置。トレーに一定の水がたまるとセンサーが感知して自動で栓が閉まる。水やりに人手もかからない。土ぼこりがたたず、飲食店内などの装飾にも使える。
機材一式を含めたパフカルの価格は、「土」を扱うゼネコンや造園業者の商品の価格とほぼ同じ。金山典生・環境緑化部長は「設置後の様々な面倒がないという点で差別化できる」と自信をみせる。
サントリーは園芸市場に89年に参入、今や大手の一角を占める。ビールの大麦や茶葉など原料の応用研究に取り組み、独自開発した花の苗などを販売してきた。04年には世界で初めて「青いバラ」の開発にも成功。成長分野として、屋上緑化に目を付けた。08年3月に環境緑化部を立ち上げて、受注を始めた。
初年度となった08年度の受注目標は100件だったが、既に150件(約1億円)を突破した。屋上緑化市場は07年で約450億円。12年には倍増すると見られており、サントリーはその時点で50億円の売り上げを目指している。
国土交通省によると、07年までに緑化された全国の建物の面積は累計約190万平方メートル。01年に比べ約7倍に拡大した。環境意識の高まりを背景に、地方自治体が建物の新・改築にあたり緑化を義務づけたり、助成金を出したりといった普及策を進めている。