【動画】関西学院初等部・元山一則先生=安冨良弘撮影 |
■兵庫・関西学院初等部 元山一則さん(45)
【宮坂麻子】「いよいよ戦争に行きます。その時、お父さんはどんな気持ちだったんだろう」
4年C組の子の「国語ノート」には、教科書に載っている物語「一つの花」(今西祐行)のコピーがはられている。いつも「一つだけちょうだい」と食べものをねだる幼い娘のゆみ子に、父は出征の日、おにぎりに代えて一輪のコスモスを与え、喜ぶ姿を見て、汽車に乗って行く話だ。
元山先生は、段落ごとのお父さんの気持ちの変化を読みとらせようとしている。
「前の段落の時、何回も同じ言葉を書いている子いたよね。何だった?」と先生。「不安」
「何回書いてた?」「6回」
「何が不安なんやった?」
「死ぬのが怖い」「帰ってこられない」「(敵を)殺すのが怖い」「ゆみ子の将来も不安」……。
「どれくらいの不安かやってみて」と先生が言うと、みんなは、両手をめいっぱい広げて、不安の大きさを表現する。
元山先生は、子どもたちの視覚に訴える授業を、いつも心がけている。聞いた言葉は抜けてしまうが、目で見せることで印象付け、より理解が深まるからだ。
この日は、4段落目。
「さあ、汽車が入ってきました。何が始まった?」と先生。「ゆみ子の『一つだけちょうだい』」
「お父さんはどう思ったやろ」
「あわてた」「なんでやろうな」
ここで、先生は、黒板に教科書の文章を書いた紙をはって、読み上げた。「ゆみ。さあ、一つだけあげよう。一つだけのおにぎり。大事にするんだよう……」
すると、教室中から「違う!」「違う!」と声が上がった。「『おにぎり』じゃなくて『お花』」
先生は、わざと教科書の言葉を変えて書いていたのだ。