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(ニュースのおさらい)和牛オーナー制度 何が問題?

図:安愚楽牧場の和牛オーナー制度のしくみ拡大安愚楽牧場の和牛オーナー制度のしくみ

 和牛(わぎゅう)オーナー制度(せいど)と呼ばれる方法でお金を集めていた「安愚楽牧場(あぐらぼくじょう)」という会社の元社長たちが逮捕(たいほ)されました。2011年8月、約4300億円の負債(ふさい)を抱(かか)えて経営(けいえい)破綻(はたん)し、約7万3千人から集めたお金が返せなくなっています。何がいけなかったのでしょうか。

■母牛の頭数ごまかして契約

 安愚楽牧場の本社は栃木県那須塩原(なすしおばら)市(し)。全国に約40カ所の直営(ちょくえい)牧場を持ち、ステーキや焼き肉の材料になる黒毛(くろげ)和牛を市場(しじょう)に出荷していた。

 安愚楽牧場が運営(うんえい)していた「和牛オーナー制度」は、子牛(こうし)を産む母牛(ははうし)を一般の出資者(しゅっししゃ=オーナー)に買ってもらうことから始まる。母牛から子牛が生まれたら、安愚楽牧場が市場で売り、その代金からエサ代などを引いた差額(さがく)をオーナーが「利益金(りえききん)」(配当金(はいとうきん))としてもらえる仕組みだった。

 例(たと)えば、オーナーが100万円で母牛を買ったとする。この母牛が子牛を出産(しゅっさん)し、この子牛が市場で10万円で売れれば、エサ代の6万円を引いた4万円がオーナーに支払(しはら)われる。子牛が生まれても生まれなくても配当金は年1回払われるし、契約(けいやく)期間が終われば、最初に100万円で買った母牛は安愚楽牧場が同じ金額で買い戻(もど)すので、オーナーが損(そん)をすることはない。

 母牛を買うといっても、牛の世話や出産は牧場が行うため、オーナーは最初にお金を支払えば、何もしなくても配当金がもらえるのが特徴(とくちょう)だ。

 では、なぜ安愚楽牧場の元社長たちは逮捕されたのか。

 その理由は、安愚楽牧場がオーナーに売っていた母牛の一部が、実は存在(そんざい)しない牛だった疑(うたが)いがあるからだ。

 具体的には、2010年度に全国のオーナーが買い、安愚楽牧場が育てている母牛は、約9万7千頭いるはずだった。しかし、国の調査(ちょうさ)では、実際に牧場で飼育(しいく)されていた母牛は約6万5千頭で、約3万2千頭も少なかった。少なくとも過去(かこ)5年間同じような状態が続いていた。

 しかし、パンフレットには「母牛は全頭(ぜんとう)いる」と書いてPRし、契約(けいやく)する際も母牛が不足していることをオーナーに説明していなかった疑いがあることがわかった。これは、消費者(しょうひしゃ)の保護(ほご)を目的に制定(せいてい)された「特定商品(とくていしょうひん)預託(よたく)法(ほう)」という法律に違反(いはん)する疑いがあるとして、警察が元社長ら経営陣(けいえいじん)の3人を逮捕したのだ。

■「国の対応、遅れ」の声も

 安愚楽牧場は1981年に設立(せつりつ)され、和牛オーナー制度の「元祖(がんそ)」と呼ばれた。90年代には安愚楽牧場をまねた会社が十数社もできた。

 しかし、オーナーへ返金できなくなる会社が続出(ぞくしゅつ)。2008年に社長が詐欺容疑(さぎようぎ)で逮捕された「ふるさと牧場」(東京都)など、警察に摘発(てきはつ)される業者もあった。和牛オーナー制度に疑問符(ぎもんふ)が付(つ)く事態(じたい)になったが、安愚楽牧場だけが生き残った。

 農林水産省(のうりんすいさんしょう)は09年1月、安愚楽牧場に立ち入り検査した。このとき、同省は「経理(けいり)がずさん」と指摘(してき)し、改善(かいぜん)と定期的な報告を求めた。

 しかし、同年9月、安愚楽牧場を管理する国の機関が農水省から消費者庁(しょうひしゃちょう)へ変わった。すると、消費者庁は「報告が必要と判断した場合、こちらから話を聞く」として、報告を受けなかった。

 実際には経営はうまくいかなくなっていた。母牛が少ないため生まれる子牛が少なく、牛を売って得られる利益も少なかった。しかし、安愚楽牧場はオーナーに年1回の配当金を払い続けていた。そのため会社のお金がなくなって経営が行(い)き詰(づ)まり、11年8月に破綻した。その時点で約4300億円の負債(借金〈しゃっきん〉)があり、約7万3千人のオーナーにお金が戻らないままだ。

 オーナーたちは、農水省や消費者庁が早めに調査をしておけば被害(ひがい)の拡大(かくだい)が防(ふせ)げたと批判(ひはん)している。国に対して損害賠償(そんがいばいしょう)を求める裁判(さいばん)を起こす方針(ほうしん)だ。(波戸〈はと〉健一)

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