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(ニュースのおさらい)北極海の氷、減るとどうなる?

図:小さくなっていく北極の夏の海氷面積拡大小さくなっていく北極の夏の海氷面積

 北極(ほっきょく)の海氷(かいひょう)がどんどん減(へ)っています。地球が暖(あたた)かくなり、海氷も解(と)けやすくなっているからです。「将来(しょうらい)、夏の北極海から氷(こおり)がなくなる」との予測(よそく)もあるほどです。海氷がこのまま小さくなると、環境や生き物にどんな影響(えいきょう)が出るのでしょうか。良いこともあるのでしょうか。

■今までで一番せまい面積に

 北極の夏の海氷は1980年ごろから減り始めて、ここ10年は解ける量が多くなってきている。人工衛星(じんこうえいせい)で観測(かんそく)を始めた79年から2000年までは9月の海氷面積は平均670万平方キロあったが、昨年9月16日には341万平方キロになった。観測が始まって以来、最小の記録だ。

 「今年の夏は、それより約5%小さくなる」と東大(とうだい)大学院(だいがくいん)新領域(しんりょういき)創成科学(そうせいかがく)研究科(けんきゅうか)の山口一(やまぐちはじめ)教授(きょうじゅ)のグループは予測した。

 原因は、二酸化炭素(にさんかたんそ=CO2)などが増えて温度が上がる地球温暖化(おんだんか)だ。海水温も上がって北極の氷が解ける。白い氷は太陽の光を反射するが、氷が解けると海面が出て、太陽光を浴(あ)びて海水はさらに温まる。氷はできにくくなり、できても解けやすい。こうして、海氷は減り続けてしまうというわけだ。

 世界の研究者は北極の海氷の広がりを人工衛星で観測している。地表や海面、大気からは自然に「マイクロ波(は)」という弱い電磁波(でんじは)が出ている。これを衛星でとらえると、どこが海面で、どこが氷かがわかる。

 日本では、国立極地研究所(こくりつきょくちけんきゅうじょ)など35機関(きかん)が北極の気候変動(きこうへんどう)を探る共同研究を始めている。これに参加している東大のチームは、氷の厚(あつ)さに注目し、今年の夏の海氷の広がりを予測した。

 「冬に氷が集まってきて厚くなる所は夏になっても解けにくい。逆に薄(うす)い氷が多い所は早く解けるはず」と木村詞明(きむらのりあき)特任(とくにん)研究員(けんきゅういん)は考えた。冬の氷の動きを観察し、氷が密集(みっしゅう)したり、薄く広がったりする所をみつけて、そこから夏の海氷の広がりがどれくらいになるかを推計(すいけい)した。

 一方、南極の氷は減少がはっきりと確認されていない。北極の海氷が海に浮(う)かぶ薄い氷なのに対して、南極の氷は大陸の上にあり、厚さは平均約2千メートルもある。地球上の氷の9割もの量があって、簡単には解けない。

■気象に変化 船は「近道」

 「このままいくと30〜50年後には夏の北極海に氷がなくなってしまう」。多くの研究者はそう考えている。「減少傾向(げんしょうけいこう)は続く。一時的に戻(もど)ることもあるかもしれないが、昔ほどには戻らない」と山口教授もみている。

 海氷が変わると、海や沿岸(えんがん)の生き物も影響(えいきょう)を受ける。エサを捕(と)れる場所が変わってすむ場所が変わったり、生息数(せいそくすう)が増えたり減ったりするかもしれない。

 気象(きしょう)は変化が出始めている。海面が出たり氷に覆(おお)われたりすることによって、その上の大気(たいき)の流れが変わるからだ。北極周辺だけではなく、影響は広くに及ぶ。北極の海氷が小さくなると低気圧(ていきあつ)の通り道が変わって、日本の冬が寒くなるという研究も報告(ほうこく)された。さらに海氷が減っていけば、異常気象にもつながっていくかもしれない。

 心配ばかりではない。北極の海氷が消えると、船が通れる「近道(ちかみち)」ができると期待する人たちもいる。

 東京から欧州(おうしゅう)へ船で行くのに、アフリカ大陸南端(なんたん)をまわると約2万8千キロ、スエズ運河(うんが)を通っても2万キロ以上だが、北極海を通れば約1万3千キロですむ。昨年は氷がなくなったロシア北部沖を通って、欧州と中国(ちゅうごく)や韓国(かんこく)などを結ぶ航路(こうろ)を、船が46回も行き来した。

 北極海を航海するには、いつどこの氷がなくなるかを予測して計画しなくてはならない。今年は、ロシア北部は7月21日ごろ、カナダ北部は8月6日ごろに氷が消えて航路が開通しそうだと研究チームは予測した。

 「北極海を通れば時間も燃料(ねんりょう)も節約(せつやく)できて、環境にもいい」と山口教授はいう。船が航海中に記録する天気や波などの情報を提供(ていきょう)してもらえると「地球環境の研究にも役立つ」と期待している。(中山由美)

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