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2013年度大学入試センター試験
試験日:2013年1月19日・20日

特集

どこでも無料で受験勉強 大学生のネット教室、次々開設

 どの地域に住むどんな高校生にも公平に受験勉強のチャンスを――こんな理念に共感した全国の大学生が、自ら習得した受験勉強のコツを活用し、無料の授業動画にして次々とインターネットで公開している。家庭の経済状況が学歴格差につながってしまう現状を変えられるか。

 「今日の授業は硫酸についてです」。東京・駒場にある受験応援サイト「manavee(マナビー)」事務所で、東京大2年の苅田譲(かんだ・ゆずる)さん(19)=理学部化学科に進学予定=がビデオカメラに語りかけた。これまでに撮った化学などの授業85本はマナビーで無料公開中だ。

 画面に生徒のニックネームが表示され、先生への質問、やりとりは公開される。「超納得。化学が好きになりました(笑)。安心して寝れます」(沖縄・高3女子)。「文化祭疲れで爆睡したら授業が難しくなっていた。頑張ります」(兵庫・高2女子)――。いわばネット上の仮想教室だ。

 マナビーは2年前の10月、東京大3年の花房孟胤(はなふさ・たけつぐ)さん(22)が設立を思い立った。ヒントは米国の元ヘッジファンド勤務、サルマン・カーン氏が始めたサイト「カーンアカデミー」。足し算から高度な経済学や物理学まで計3400本以上の授業が無料で公開され、動画の再生回数は1億9千万回を超える。

 英語の勉強に使っていた花房さんは、何度も再生できて巻き戻しも自由な「授業」に「本当に便利。すごいやつが世界にはいるもんだ」。で、ふと思った。「なんで日本にないんだろう。自分でつくれるかな」

 サイトのプログラムを調べ仕組みを研究。ターゲットは大学受験生に定めた。結果が人生に大きく影響し、多くの若者が必死になる人生の一大イベントなのに、十分な受験対策ができない高校もあり、大手予備校の授業料は高い。結果的に裕福な家庭の子ほど恵まれた受験対策ができる。実際、周囲の東大生も裕福な家庭の出身者が多かった。

 理念をサイトに書き込んだ。「地理的・経済的な環境格差が、合格の大きな決め手になっている不公平な現状がある。マナビーは誰もが無料で受験勉強できる環境をウェブ上に実現します」「高校生ユーザーの利用が有料になることは絶対ありません」。友人をたぐって他大学にも声をかけると、東北大、慶大、京大、九大など12大学に134人の仲間が広がった。

 漢文と和歌を教える京都大文学部の小西由起さん(21)は松山市出身。バイト先の塾で、自分が高3で知った受験知識を小学生が知っていることに衝撃を受けた。「どの地域で育つかで受験環境は全然違う。自分の知識で役に立てるならがんばりたい」

 大阪大経済学部の嵐脩真(しゅうま)さん(20)も、授業料の高い大手予備校をあきらめ自習中心の個人塾に通った経験がある。講座数の少なかった地学の授業を担当し、お金がなくても十分対策ができるようにと願う。

 マナビー初の動画は、花房さんが自らカメラを固定して撮った数学。初日の利用者は2人。それが約2年後のいま、授業動画は2290本で、1日420人が利用する。「仲間を増やすことで充実したサイトに育てたい」と東大を休学し、各地の大学を回って理念や撮影ノウハウを伝え歩く。「ウェブ上に10万種類ぐらいの無料の授業動画が当たり前のように存在し、誰もが気に入る授業を簡単に見つけられる社会にしたい」

■米では公教育への進出も

 授業の動画や教材をウェブ上で無料公開する動きは米国で先行し、広がっている。貧富の差も国境も超えて教育を行き渡らせる「革命」とみる人もいる。

 大学がウェブで教材などを無料提供する動きは10年以上前に始まり、現在は世界で数百の大学が実施。今春にはマサチューセッツ工科大とハーバード大が共同で、無料公開授業を履修したことを認定する試みを始めた。設立会見で「オンライン教育は印刷機の発明以来最大の変革で、世界を変えるだろう。目標は世界の10億人に教育を提供すること」と宣言。大学経営への悪影響を心配する人もいたが、世界の優秀な学生をひきつけて入学させる効果が確認されているという。

 子どもも対象にして成功したのが2008年誕生のカーンアカデミー。カーン氏がいとこに勉強を教える動画をユーチューブに投稿して人気を呼んだのが始まりで、中国語など12言語での字幕づくりも進む。最高執行責任者は日本のマナビーについて「私たちは地球上の誰もが良質な教育への無料アクセス権を持つべきだとの理念を持っている。この使命を果たすコンテンツが日本でも生まれていることをうれしく思う」と語った。(金成隆一)

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