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2013年度大学入試センター試験
試験日:2013年1月19日・20日

特集

願えばお魚はやってくる 東京海洋大学客員准教授・さかなクン

お魚を食べて頑張りましょう!

写真:さかなクン:「本にまだ載っていないような専門的な内容を学生の皆様にしっかりお届けさせていただきたいと思います。さかなクンもしっかり学んで頑張らなくては」。 大学での今後の講義について抱負を語るさかなクン拡大「本にまだ載っていないような専門的な内容を学生の皆様にしっかりお届けさせていただきたいと思います。さかなクンもしっかり学んで頑張らなくては」。 大学での今後の講義について抱負を語るさかなクン

写真:さかなクン:「『出てきてくれないかな』と願いながら潜っていたら、ゆっくり羽ばたくようにマンタ(オニイトマキエイ)が……」。海の生き物たちとの遭遇を身ぶりを交えて語るさかなクン拡大「『出てきてくれないかな』と願いながら潜っていたら、ゆっくり羽ばたくようにマンタ(オニイトマキエイ)が……」。海の生き物たちとの遭遇を身ぶりを交えて語るさかなクン

写真:さかなクン:「こんなシケでは船は出せないよ」と渋る漁師さんを「そこを何とか……」と拝み倒して出港したら、海が凪いで無事魚を観察できたことも一度二度ならずあったという
拡大「こんなシケでは船は出せないよ」と渋る漁師さんを「そこを何とか……」と拝み倒して出港したら、海が凪いで無事魚を観察できたことも一度二度ならずあったという

 高校卒業後に進んだのは、東京・渋谷にあった動植物の専門学校でした。憧れの奥谷喬司先生(東京水産大学名誉教授、軟体動物の権威)のおられた東京水産大学(現・東京海洋大学)に入りたかったのですが、あまりにもお魚に夢中すぎて「このままでは難しいだろう」と最初から受験しませんでした。

 でも進路について、あせりは感じませんでした。周りのお友達は頑張って勉強していましたが、「自分にはお魚がある」と思えたからです。先生たちは「絵を描きたいのならばその方面に進んだ方がいい」とおっしゃったのですが、母は「習わせたら、絵の先生と同じ画流になってしまう。うちの子はずっと好きなふうに描いてきたから、好きなようにさせます」。家で「勉強しなさい」と言われたことはほとんどなかったです。

■描く喜び、見られる喜び

 物心ついた頃はトラックの絵を描いていました。そして水木しげる先生の点描の妖怪にひかれ、小学校でお友達が描いたタコの絵をきっかけにお魚の魅力に目覚めました。大きさや形が特徴的で、いろいろな種類があるものが好きだったんです。

 図鑑や水族館のお魚、買ってきた鮮魚を見つめては目やヒレ、ウロコなどひとつひとつの形に改めて驚きました。十数時間描き続けたこともあります。小学校の新聞づくりの宿題でお魚のことを書いたら職員室で話題になり、廊下に張り出してくださいました。ほかのクラスのお友達が「へぇー、こんな魚がいるんだ」と感心するのがうれしくて、ますます絵を描くことが好きになりました。

 お魚を観察して描き続け、高校時代にテレビのお魚についてのクイズ番組で優勝。それまでお魚の美しさに爆発するほど感動しても心の内に秘めていたのですが、難しい質問に答えられて「感情は素直に表現していいんだ」と思えるようになりました。跳びはねて「ギョエーッ」と喜びを表に出すようになったのはそれ以来です。

■「魚の仕事を」試行錯誤

 専門学校に入って水族館で実習する一方、熱帯魚店やお寿司屋さんでアルバイトもしました。水族館では多くを学びましたが、たくさんの生き物の命を守り、機械の操作方法を覚えなければならない。自分がしたいのは見たこともないお魚に出合って絵を描くこと。水族館の仕事とはちょっと違うと思いました。

 熱帯魚店は世界のお魚が集まってくるのでわくわくしましたが、「あー、こういうヒレの動かし方なんだ、こんなに口が伸びるんだ、目覚ましく色が変わるんだ、これは本当にビックリだー」と眺めているうちにお客に「これちょうだい」「あ、ありがとうギョざいます」と買われてしまい、頭の中に「ドナドナ」の歌が。「あの子は大事にしてもらっているだろうか、ああ全部自分が買い占めればよかった」……悲しみが大きすぎました。

 寿司屋でも甘エビの殻むきしか褒められず、皿を割るわ、握るとシャリがどんどん大きくなっておにぎりみたいになるわで、大将からは「向いてないね」。でも頼まれて店の表の壁にマグロやタイ、マンボウなどを描いたら評判になり、ほかの料理店や市場から「うちにも描いて」と依頼が来るようになりました。これがドキュメンタリー番組に取り上げられたのがきっかけで今の事務所に誘われ、雑誌や朝日小学生新聞にお魚の絵を描いたり紹介したり、テレビに出てお魚の解説をしたりする仕事をいただくようになりました。

■憧れた大学の教壇に

 幼い頃から好きだったお魚の絵を描くことが仕事になりましたが、自分の中では決して「趣味の延長」ではありません。誰に何と言われようとこれしかない、と思ってました。ちっちゃなお子様からおじいちゃんおばあちゃんまでが喜んで応援してくれて、うれしく感動しながら活動しています。

 奇跡的な出会いがつながって一昨年、絶滅したと思われていたクニマスを山梨県の西湖で再発見できたのも、お魚を一生懸命描いてきたからだと思っています。海でお魚や動物に「どうしても会いたいな、出てきてくれないかな」と願うと、お魚たちが目の前に現れることは幾度もありました。強く願い続ければ、神様は時々驚くような贈り物を下さる。そんなことを思ったりします。

 大学進学とは全然違う道を歩んでしまいましたが、2006年、東京海洋大学の客員助教授にお招きいただきました。昨年4月から、1年生を対象とした全9回の講義を初めてひとりで担当。大好きな学問の道に進まれた学生さんたちの目は、本当に輝いていました。これから大学を志す皆様も「この大学に入りたい」「こういう道に進みたい」という熱い思いを持ち続けて、ぜひ突き進んでもらいたいです。(聞き手・戸田拓)

     ◇

 さかなクン 東京都出身、東京海洋大学客員准教授。テレビ東京系「TVチャンピオン」の「全国魚通選手権」で5回連続優勝。2002年から朝日小学生新聞に海の生き物を紹介するコラム「おしえてさかなクン」を連載。いじめが社会問題化した2006年に朝日新聞に寄稿した「広い海へ出てみよう」が反響を呼ぶ。2010年、絶滅したと思われていたクニマスの生存確認にかかわった一件は、天皇陛下が同年の誕生日会見で名前を挙げて貢献に言及するなど大きな話題となった。

 (初出・2012年01月10日朝日新聞デジタル。内容は掲載時点の事実に基いています)

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