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2013年度大学入試センター試験
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特集

「なりたい自分をイメージして」野菜パティシエ柿沢さん

【動画】野菜パティシエ柿沢安耶さんインタビュー=瀬戸口翼撮影

写真:柿沢安耶さん:「農業に興味を持ってもらえるきっかけになってくれれば」と話す柿沢安耶さん=東京都目黒区、瀬戸口翼撮影拡大「農業に興味を持ってもらえるきっかけになってくれれば」と話す柿沢安耶さん=東京都目黒区、瀬戸口翼撮影

写真:柿沢安耶さん:一番人気の「グリーンショート・トマト」を作る柿沢安耶さん。「食の楽しさを大事にしたい」=東京都目黒区、瀬戸口翼撮影拡大一番人気の「グリーンショート・トマト」を作る柿沢安耶さん。「食の楽しさを大事にしたい」=東京都目黒区、瀬戸口翼撮影

写真:柿沢安耶さん:ケーキ作りをする柿沢安耶さん。「料理を作るだけではなく、食文化を紹介したい」=東京都目黒区、瀬戸口翼撮影拡大ケーキ作りをする柿沢安耶さん。「料理を作るだけではなく、食文化を紹介したい」=東京都目黒区、瀬戸口翼撮影

写真:柿沢安耶さん:動物好きの柿沢安耶さんは、肉をさばくことに抵抗感を感じ、フランス料理の道を断念。パティシエを目指す=東京都目黒区、瀬戸口翼撮影拡大動物好きの柿沢安耶さんは、肉をさばくことに抵抗感を感じ、フランス料理の道を断念。パティシエを目指す=東京都目黒区、瀬戸口翼撮影

写真:柿沢安耶さん:「新鮮な野菜を作って下さる方々がいらっしゃるから、お店を出せた」と話す柿沢安耶さん=東京都目黒区、瀬戸口翼撮影拡大「新鮮な野菜を作って下さる方々がいらっしゃるから、お店を出せた」と話す柿沢安耶さん=東京都目黒区、瀬戸口翼撮影

 野菜を使ったスイーツの専門店「パティスリーポタジエ」(東京都目黒区)でパティシエをしています。

 私が料理の世界にひかれたのは高校3年生。生まれも育ちも東京ですが、幼いころから、どろんこ遊びが好きな子豚の冒険を描いた絵本「どろんここぶた」(文化出版局)がお気に入りで、「いつか豚と暮らしたい」と考えていました。

 高校3年生になって進路を決める際、畜産関係は無理だと思いました。私は人が食べるために動物を殺せない。そんなとき、フランスで豚を使って高級キノコ「トリュフ」を掘る仕事があると知りました。豚と一緒にいられ、1年の半分ぐらい働けばいいらしい。「黒ダイヤと言われるキノコって何?」と、フランスの食材を調べ始めました。

 フランスをもっと学びたいと、学習院大仏文学科に推薦で入学しました。それまで全く触れたことがなかったフランス語には苦労しました。難解な哲学書を原文で読み、映画を見て感想をまとめる。単語や文法をひたすら暗記しました。

 中学や高校のテスト勉強でも知識を詰め込みましたが、振り返れば、自分なりの勉強方法を見つけるのに役立ったと思います。例えば暗記のとき、私は目で見て覚えた方が頭に残りやすい。パティシエとなった今、本などに載っている様々な景色や料理を記憶に刻み、新しいケーキのデザインを考えています。

 大学生活で、シェフになりたいとの思いが日に日に強まり、フランス料理の教室に通ったり、レストランでアルバイトをしたりしました。でも厨房(ちゅうぼう)には立てず、接客ばかりでした。

 3年生の冬休みにフランスへ短期留学し、バイトでためたお金で、パリの「リッツ・エスコフィエ」という専門学校に1カ月間通いました。そこで、本格的なフランス料理を学んだのですが、ウサギやハトなどの毛をむしって内臓を取り出す作業でつまずいた。「シェフになったら何千匹も?」と思うとやりきれなくなってしまって。パティシエなら肉を扱わないで済むと、大学卒業後は大手ケーキ店に就職しました。

 その後、カフェを経営する会社に転職し、新規店舗のメニューの開発などを手掛けましたが、自分で料理を作り、提供したいとの思いを抑えられなくなっていました。

 2003年6月、結婚を機に、夫の実家のある宇都宮市内で「オーガニックベジカフェ・イヌイ」をオープンしました。カフェ勤務時代に出会った「身土不二(しんどふじ)」という考え方を取り入れ、有機野菜をおいしく提供したかった。身土不二とは「地元で栽培された旬のものを食べるのは体にもっとも良い」という地産地消に通じる思想です。

 開店の準備を進める中で、「おいしい」と思った野菜の生産者を訪ね、仕入れさせて、とお願いしていた時のこと。有機野菜の大根、白菜などが植わった畑の土が、足を取られるほど柔らかいことを知りました。真冬で凍える寒さなのに、掘り起こした野菜は温かい。「あぁ、生きている」と実感しました。

 野菜のこと、畑のこと、農業のこと。お客さんと生産者とつなぐことが私の役割だと思い、店を農業の発信地にしようと、強い使命感が芽生えました。

 ある畑で、間引かれて捨てられた小さなニンジンを見つけました。手をかけて育てられたのにもったいないと、葉を練り込んだパイ生地にニンジンを甘く煮詰めて入れたパイを作り、お客さんに出しました。見た目はソーセージパイのようなのに野菜が原料。お客さんは驚きました。

 カロリーが高く健康に悪いとされるスイーツが、実は野菜で、さらにおいしければ、いろんな人に野菜を好きになってもらえるのではと、06年、現在の野菜スイーツ店を開きました。

 高校時代、フランスに恋した私を、料理や語学の先生たちが留学や就職につないでくれ、今は夫が一緒にお店を営んでくれています。1人でできなくても、意思を示せば力を貸してくれる人が現れます。

 私はつらい時、60歳になった自分を想像します。食育を広めて、海外で日本の野菜の評判を高め、結果、野菜の消費量がもっと増えている――。そう思えば、目の前の大変なことは「未来への糧になるのだ」と。

 今、受験勉強中の皆さんは「なんとなくみんながやっているから」と思っている人もいるのでは。でも20年後、30年後の自分を思い描いてみてほしい。進む道が見えてくるはずです。(聞き手・笹円香)

     ◇

 かきさわ・あや 東京都出身。35歳。大学卒業後に勤務したカフェでマクロビオティック(玄米菜食)に出会い、ベジタリアンになる。2006年開業の「パティスリーポタジエ」(http://www.potager.co.jp/)が注目を集め、11年には六本木ヒルズに「野菜寿しポタジエ」をオープン。各地の特産野菜のプロデュースや食育に関する講演活動にも力を入れる。

 (初出・2013年01月01日朝日新聞デジタル。内容は掲載時点の事実に基いています)

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