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2013年度大学入試センター試験
試験日:2013年1月19日・20日

特集

「勉強は未来への体力作り」NPOカタリバ今村久美さん

【動画】今村さんから受験生へ=安冨良弘撮影

写真:今村久美さん:「大学に入学したら、いろいろなことに挑戦する楽しさを知ってほしい」とNPO法人カタリバ代表の今村久美さんは話す=東京都杉並区高円寺南、安冨良弘撮影拡大「大学に入学したら、いろいろなことに挑戦する楽しさを知ってほしい」とNPO法人カタリバ代表の今村久美さんは話す=東京都杉並区高円寺南、安冨良弘撮影

 「カタリバ」というNPO法人で代表をしています。全国の高校生に、人生の少し先輩たちとの対話を通して自分の目標や夢を見つけてほしい――。そんな思いを込めた“場”作りを大学在学中の2001年にスタートし、現在12年目です。

 高校時代の私は勉強嫌いで消極的。友だちとは好きなタレントや彼氏の話ばかりで、「張り切るのはかっこ悪い」と授業中も何も発言しなかった。目立つと仲間から外されるのではと不安だったのです。でも内心〈こんな自分じゃダメだ〉とも思っていました。

 高校2年の夏、大学のオープンキャンパスに足を運びました。ステージに立つ先輩たちが「政治に対する提言」「デジタルメディアを使ったアート制作」などのテーマについて熱弁を振るっているのが、最高におしゃれで、かっこよく見えた。自分の意思で行動する姿は輝いていました。

 その後、一部の大学で、面接や小論文で合否を決める「AO入試」を採用していると知りました。もともと作文が好きなのでチャンスがあるかもしれない。腕を磨くために、友だちの注目を集めないよう、こっそり始めたのが新聞への投書でした。

 身近な問題について、自分の意見をつづっては新聞社へ送っていました。ある日、地元のシャッター商店街と大型スーパーに関する文章が掲載され、秋田県の読者から反響の手紙が届いた。田舎の高校生の私が世界とつながった、と感激しました。大学に入れば、もっと刺激が受けられるだろう――。面接や小論文対策を何度も繰り返した末、1998年春、念願の慶応大学環境情報学部にAO入試で合格しました。

 入学後、価値観が一変しました。友だちは皆、自分の課題や意見を明確に持ち、行動していました。私も触発されて、自分で考え、挑み、失敗する大切さを学びました。

 例えば、サークル活動でドキュメンタリー映画を作った時のこと。ドラマ「北の国から」の俳優田中邦衛さんに取材を申し込むと、すんなり応じてもらえた。結局、作品は完成させられませんでしたが、学生でも著名人に会ってもらえると知った。失敗しても再挑戦できるのが学生の特権であり、失敗から学ぶことは実は大きいと実感しました。

 一方、成人式で地元の友人と再会した時は、そのギャップに驚きました。誰もが「大学は退屈」「楽しくない」と口々に不満を言っていた。なぜ私は充実しているのか。それは、自分の課題や夢を腹を割って真剣に明かせる相手がいるからではないか――。そこから「カタリバ」の構想が生まれました。

 まず慶応大学に興味を持つ高校生を、同級生と引き合わせてみました。当時、明治大学に通っていた三箇山優花さん(35)が共感してくれ、大学生が高校に出向いて対話するという企画を2人で練りました。私は就職せず、企画書を手に学校へ“飛び込み営業”を始めました。

 初めは「教育が悪いと言うのか」と拒絶されましたが、そのうち共感してくれる先生も出てきて、翌02年、千葉県内の高校で初めて「カタリ場」を開催しました。その年は2件、翌年は3件と、少しずつ増えていきました。当時はアルバイトで毎月の生活費十数万円を稼ぐ生活。スーツをまとった企業勤めの友人をうらやましく思うこともありましたが、三箇山さんが退社して活動に専念してくれるようになり、「もう絶対引き返せない」と必死になりました。

 その後、私たちの活動は口コミで広まり、今では全国で年間100回ほど催しています。東日本大震災後、宮城県女川町と岩手県大槌町で小中学生向けの学習塾も始めました。震災後1カ月経っても避難所生活を送り、仮設店舗が再開したのに炊きだしや支援物資が配られている実態に違和感を覚え、「子どもたちには、自分で自分の道を切り開く力を身につけてほしい」と思ったからです。

 最近は事業が軌道に乗って、海外企業が私たちへの協力を申し出たり、私たちがシンポジウムに招かれたりしています。活動をアピールする絶好のチャンスですが、英語が苦手な私はその機会を十分に生かせていません。高校時代、「どうせ英語を使う職業なんてつかない」と言い訳をしては逃げていた日々が悔やまれます。

 だから、受験生には「今はどんなにつらくても、勉強は無駄にはならない」と伝えたい。やがて世の中のことを幅広く知り、それぞれが夢や目標を見つけた時、これまでの努力をもとに、より大きく羽ばたくのです。そのための体力作りが受験勉強だと思います。(聞き手・笹円香)

     ◇

 いまむら・くみ 岐阜県高山市出身。33歳。大学時代に始めた「カタリバ」(http://www.katariba.net/)は、06年NPO法人に。震災後、宮城県女川町と岩手県大槌町に拠点を設け、子どもたちのための「コラボスクール」(http://www.collabo-school.net/)を開いた。

 (初出・2013年01月23日朝日新聞デジタル。内容は掲載時点の事実に基いています)

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