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ずるずる延ばし

2005年05月12日

 息子が生まれて1カ月半ほどのち、留学先のニューヨーク(NY)の大学の休みを利用して、夫はやっと日本に一時帰国し、息子と対面した。そして、ほんの1週間ほどでまたNYに戻って行った。

 その頃、私は無謀にも、仕事に復帰していた。

 今考えたら、まったくアホであった。

 夫はNY、私は仕事、なら息子はどうするのだ。まして、母乳育児の場合、誰が息子に母乳を飲ませるのだ。それは、私ではないか。

 結局、仕事に復帰したものの2カ月ほどで、私はギブアップ。

 仕事は一時休止して育児に専念したいと事務所に相談に行くと、「そうでしょ、だから言ったでしょ」と、あきれられてしまった。

 実を言うと、事務所は1、2年仕事を休んで育児に専念したらどうだと、息子が生まれる前に提案してくれていたのだ。

 実を言うと夫も、留学を切り上げて日本に帰ってこようかと、提案してきてもいたのだ。

 ただ私1人が、妊娠期間中があまりに順調だったため、そのまま育児も順調にいくものだと思い込み、「大丈夫、大丈夫」と、今となっては自分でもあきれるくらいきっぱりと、言い切っていたのであった。

 いや、育児は順調だった。睡眠時間は細切れで、超寝不足ではあったが、母乳もよく出たし、息子も超元気だし、申し分のない育児の始まりだった。

 思い違いは、妊娠期間中の順調さもさることながら、子どもが生まれる前は身ひとつだが、子どもが生まれたら身が二つになるということの大変さを、まったく理解していなかったことにもあったと思う。

 身がひとつのときは、そのまま仕事に行けばいい。が、身が二つになった場合、私が仕事をしている間、息子はどうするのだ、誰が母乳を飲ませるのだ、それは、私ではないか、にまた戻るわけだが、これが妊娠期間中にきっちりイメージできていなかったことが、そもそもアホだったのである。

 さて、では仕事は一時休止して育児に専念するにしても、日本にいるか、NYの夫の所に行くかの決断になるわけだが、あと2年ほどの留学なら(大学院へ進学が決まったので)、その間、私と息子がNYに移り住み、夫の勉強が終了したら、家族でまた日本に帰ってくればいいと決めることにした。

 しかし、そうと決めたものの、子どもが病気になったらどうしよう、母乳育児を続けるにも、はたしてNYに日本のような母乳相談所があるのだろうかと、こちらは心配事のイメージがどんどん膨らんでいき、結局NY行きは、ずるずる延ばしになっていったのであった。(次週に続く)


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    「ゆき姐(ねえ)」でおなじみの兵藤ゆきさんが、毎週ニューヨーク(NY)からお届けします。NYでの体験や日々のできごとなど、子育てについての心温まる応援エッセーです。»一覧

    兵藤ゆき プロフィール

    兵藤ゆき

    名古屋市出身。血液型O型。
    東京・名古屋・大阪で深夜ラジオのパーソナリティーを皮切りに個性的なキャラクターでテレビ番組に登場し、その後エッセー、脚本、作詞、歌手、小説等ジャンルを超えて幅広く活躍。1996年に長男誕生後、ニューヨークに。
     主な著書に「ぶんちんタマすだれ」「ゆき姐のニューヨーク裏うら散歩」「でこぼこなクラス写真〜子どもたちは黙っちゃいない〜」(いずれもワニブックス)、「ニューヨーク熱血井戸端会議」(集英社be文庫)などがある。

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    『頑張りのつぼ』表紙画像 兵藤ゆきが出逢った、ニューヨークで生きる元気な日本人たち。〜各界で活躍する有名無名の日本人8人との書き下ろし対談集〜

    「ニューヨークにいたからこそ出会えた人たちがいる。その人たちからたくさんの感動とエネルギーをもらった。そして、その人たちの頑張りを紹介したくてこの本を書きました。」兵藤ゆき

    兵藤ゆきさんの主な著作

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