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ゆき姐の子育て応援エッセー

LOVE & ピース

2007年02月08日

 息子を朝学校に送って行くと、息子のクラスメートのお母さん、ジーンに会った。

 我が家から学校までは、ニューヨーク(NY)の市バスを使ってほんの20分ほどだが、ジーンのところは、学校までのバスや電車の便が悪く、乗り継ぐと1時間ほどかかってしまうという。だから毎朝彼女が車を運転して子どもを送ってきているのだ。送ってくる時間がお互い少しずれると、そのまま何日も会えなかったりする。ジーンとも1週間ぶりだ。

 「わー、久しぶりー、家まで送っていこうか?」

 「わーい、ありがとう」

 会えばいつもこうやって誘ってくれるジーンに大喜びし、私は彼女の車に乗り込んだ。

 もうひとり、息子のクラスメートのお母さん、ジュリアもやってきた。

 彼女は子どもを学校に送った後、毎朝仕事に出かける。ジーンは、地下鉄の駅までジュリアを乗せて行こうかと彼女を誘った。彼女も会えればこうやって誘ってくれるジーンに大喜びし、車に乗ってきた。

 久しぶりに(と言っても1週間ぶりだが)会った3人は、子どものこと、学校のこと、食べ物のことなど、次から次へと話が弾む。

 3人といっても、私はいつもふたりの話を聞いているほうが圧倒的に多いのだが、ふと窓の外を見ると、1週間ほど前までは空き地だった場所が、ドッグ・ランになっているのを見つけた。バスだと通らない場所なので、今まで気がつかなかったのだ。

 “ドッグ・ラン”とは、周りを囲んだ敷地の中で、鎖から放たれた犬たちが、文字通り自由に走り回り、遊べる場所だ。

 まだこんなふうにNYで暮らす前、仕事や遊びでNYにやってきて、このドッグ・ランの存在を知ったときにはとても感心した。

 NYは言わずと知れた世界で名だたる大都会。

 私たちたちが普通、“NY!”と言われて思い浮かべるエンパイヤーステートビルディング、タイムズスクエア、ブロードウェーなど、摩天楼がひしめく場所は、NY市の五つある区(マンハッタン区、ブロンクス区、クイーンズ区、ブルックリン区、スタッテン・アイランド区)のうちのマンハッタン区というところで、およそ縦20キロ、横4キロという、けっこう狭い地域だ。でも、車も、人も、そして、犬もとても多い。

 この犬たちは、アパートの中で飼われているものが圧倒的に多く、多民族で作られているこのNYという大都会の中で暮らす人々の心のよりどころ、安らぎとしての役割を大いに担って(になって)もいる。

 ニューヨーカーにとって家族の一員でもあるこの犬たちが、人や車がひしめく大都会で、しかも日ごろはアパートの中にいる彼らが少しでも健康に暮らせるようにと、飼い主たちの発案で、ドッグ・ランは30年ほど前から作られ始めたという。

 現在では、セントラルパーク、バッテリーパーク、ワシントンスクエアパークなどの公園の中などに、少なくとも十数カ所のドッグ・ランがマンハッタンにはあり、朝夕には飼い主に連れられてやってきた犬たちが元気に走り回っている。

 自分も犬を飼っているジーンも、ボランティアで猫20匹、犬3匹の世話をしているジュリアも、新しくできたドッグ・ランを見て、とてもうれしそうだった。

 「犬も子どもも、もちろん大人も、独り占めしないで、分け合えるものは分け合い、ストレスを健康的に発散させないとね。そういった意味でドッグ・ランは、LOVE&ピースの象徴でもあるよね」

 ジーンの言葉にジュリアは大きく笑いながら、

 「その通り!」と、言葉を返したのだった。

(次週に続く)

兵藤ゆき プロフィール

兵藤ゆき兵藤 ゆき(ひょうどう・ゆき)
 名古屋市出身。血液型O型。東京・名古屋・大阪で深夜ラジオのパーソナリティーを皮切りに個性的なキャラクターでテレビ番組に登場し、その後エッセー、脚本、作詞、歌手、小説等ジャンルを超えて幅広く活躍。1996年に長男誕生後、ニューヨークに。
 主な著書に「ぶんちんタマすだれ」「ゆき姐のニューヨーク裏うら散歩」「でこぼこなクラス写真〜子どもたちは黙っちゃいない〜」(いずれもワニブックス)、「ニューヨーク熱血井戸端会議」(集英社be文庫)などがある。

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