現在位置:asahi.com>教育>子育て>ゆき姐の子育て応援エッセー> 記事 純(すみ)ちゃんの夢 (1)2007年02月22日 3月10日、11日にニューヨーク(NY)のカーネギーホールで開かれる、「VELIA INTERNATIONAL MUSIC FESTIVAL」に、NY在住のクラシックバイオリニスト多治比純子(たじひ・すみこ)さんが、あのバイオリンの名器、ストラディバリウスを持って出演する。 「でも、貸してもらったんですよ、このストラディバリウス」 マンハッタンのミッドタウンにある、彼女のアパートに遊びに行くと、ストラディバリウスをケースから出しながら純ちゃんは言った。 「貸してもらったって言うけど、そう簡単に誰でも貸してもらえるわけではないでしょ?」 「そうですかねえ」 純ちゃんはニコニコしながらのんびりと答える。 「ちょっと弾いてみます?」 「えー、いいのー? 傷でもつけたら大変だよねえ。このストラディバリウス、いくらくらいするの?」 「2億円くらいですって」 「えーーーーーーーーーーー!」 私はものすごくびっくりしたが、純ちゃんは、 「高いですよねえ」 と、やっぱりニコニコしながらのんびりと答えた。 純ちゃんは山口県柳井市出身で、6歳の頃からバイオリンを始めたという。 その動機がかわいい。 彼女はバイオリンを習う前は、電子オルガンをやっていたのだが、なんとなくほかの楽器をやってみたいなと日ごろ思っていたのだそうだ。 ある日、純ちゃんは母親に連れられて、イタリアから柳井市にやって来た室内オーケストラのコンサートを聴きに行った。 そこで弾くおばちゃんのバイオリニスト(彼女には75歳くらいに見えたそうだ)のバイオリンの音色が、なんともきれいだったのだそうだ。 あのおばあちゃんができるのなら、私にもできるはずだ。電子オルガンはやめて、バイオリンがやりたい! 純ちゃんはコンサートの帰り道、さっそくその思いを母親に告げた。 彼女の家の近所は田舎だったので、バイオリンの先生を探すのはとても大変だったようだ。 が、母親は見つけてきてくれた。 大喜びで純ちゃんは、すぐに意気揚々とバイオリン教室に通いだした。 バイオリンの稽古(けいこ)はとても楽しかったそうだ。 スパルタ教育ではなく、先生はほんとうに楽しく教えてくれたという。 キラキラ星、メヌエット、ガボットと、純ちゃんはどんどんバイオリンが弾けるようになっていった。 そして、小学校高学年の頃、とうとう彼女は山口県の音楽コンクールで優勝したのだった。 バイオリニストになるために音大を目指そう! 純ちゃんの将来の夢は決まった。 柳井市で靴屋さんを営んでいる彼女の両親は、一人娘の夢がかなうよう、全面バックアップ体制に入る。 純ちゃんも両親の経済的負担を考え、国公立の音大を目指すことにした。 しかし、音大を目指す人たちは小学校低学年の頃からすでにその体制に入っているという。 後れを取った感のある純ちゃんは、音大入試の必須であるピアノや声楽の勉強をすべく、中学入学と同時に、週末は山口県柳井市の実家から京都まで出かけて行くことにしたのだった。 (次週に続く) 兵藤ゆき プロフィール
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