現在位置:asahi.com>教育>子育て>ゆき姐の子育て応援エッセー> 記事

ゆき姐の子育て応援エッセー

人生で一番長い1週間

2007年08月09日

 ジュリアの息子が(前回参照)6泊7日の泊まりがけのサマー・キャンプからニューヨーク(NY)の家に帰ってきたのは、7月7日午前10時ごろだったそうだ。

 初めての経験で彼も疲れていただろうに、午後からジュリアと一緒に、彼は我が家にやって来てくれた。少し遅れて、お父さんのシェリーもやって来た。

 私と息子は7月9日に、NYから日本に全面帰国する予定になっていたのだ。

 夫も、引っ越しの荷物を日本に送る手配の都合で、私たちより1週間遅れてNYをたつことになっていた。

 しばらく会えないことになりそうなので、ジュリアの息子は我が家にやって来てくれたというわけだ。

 うちの息子と彼は、キンダーガーデン(日本で言う幼稚園)からエレメンタリースクール(日本で言う5年生)まで一緒のクラスだった。

 学校自体がナーサリー(幼稚園の年少)から12年生(日本で言う高校3年)まで、各学年1クラスずつの小規模の学校だったので、その学校に通っていれば、ずっと同じクラスになるわけだが、クラスメートの中でも彼とうちの息子は大の仲良しだった。

 我が家にやって来た彼は、前より全体的に少しやせたような感じだった。

 「そうでしょ、顔も前より少しシャープになったでしょ。一日中スポーツをしていたし、なんてったって、彼の大好物のチキンナゲットやフレンチフライ(フライドポテト)はキャンプでは1回も出なかったっていうし、家ではゲームをしながらポテトチップやクッキーを食べていた人が、1週間まったくそういうことがなかったんだから、そりゃあスマートにもなるわよねえ」

 ジュリアはうれしそうにそう話した。

 「さっきもね、ランチにチキンナゲットでも食べる?って聞いたら、いらないっていうのよ。キャンプで何を食べていたのか聞いたら、魚、鶏肉、豚肉、牛肉などの焼いたものがメーンで、それに野菜サラダ、果物、パン、って感じだったんですって。このまま食の改善をするいい機会だし、それは親の責任だと思ってるけど、お父さんも協力してくれないとねえ。彼は3食チキンナゲットとフレンチフライでもいい人だから」

 彼女はそう言いながら夫のシェリーを見やった。

 シェリーはちょっと照れ笑いしながら、クッキーをほおばっていた。

 1週間ぶりに息子に会ったとき、どんな感じだった? 泣けちゃった?

 とジュリアに聞くと、

 「泣かなかったけど、感激したわ。息子は、生まれてからこんなに長く感じた1週間はなかったって言うし、家に帰ってきたら、家がやっぱり一番いいって言うし、キャンプも楽しかったようだけど、家が一番いいって言われたら、親としてそりゃあうれしいものねえ」

 と、今にも溶けてしまいそうな笑顔で言った。

 人生で一番長い1週間を過ごしてきたという11歳の息子は、母親の話を聞きながら静かにうなずいていた。

(次回に続く)

兵藤ゆき プロフィール

兵藤ゆき兵藤 ゆき(ひょうどう・ゆき)
 名古屋市出身。血液型O型。東京・名古屋・大阪で深夜ラジオのパーソナリティーを皮切りに個性的なキャラクターでテレビ番組に登場し、その後エッセー、脚本、作詞、歌手、小説等ジャンルを超えて幅広く活躍。1996年に長男誕生後、ニューヨークに。
 主な著書に、(対談集)「頑張りのつぼ」(2005年7月 角川書店)…ニューヨークで活躍する日本人8人の方との書き下ろし対談集(宮本亜門・千住博・宮本やこ・野村尚宏・平久保仲人・河崎克彦・高橋克明・小池良介)、(翻訳本)「こどもを守る101の方法」(2006年7月 ビジネス社)などがある。

ご意見・ご質問

兵藤ゆきさんのエッセーについてのご意見・ご質問をお寄せください。いただいたご意見・ご質問は、個人情報を除いて兵藤さん側にもお伝えする場合があります。

このページのトップに戻る