2008年5月29日
「あーあ、魚を食べそこねたな」(前回参照)
夢から覚めた林さんはそんなことを思いながら、目をつぶって夢を回想してみることにしたのだった。(「夢の中で子どもの頃の自分に……」「厳しい教育者の子どもたち」「先生の熱い思い」「大出世した女の子」参照)
彼が住んでいた台湾の村は、人口が100人もない静かな村だった。
今住んでいるのは、世界一の大都会NY(ニューヨーク)。
そのNYに林さんはもう15年も住んでいる。
日本に留学していたときは、愛知県の小牧市に住んでいた。
そこでは、朝は小鳥の声で起こされ、夏の昼間はセミが鳴き、夜になるとカエルが鳴き、雰囲気は台湾の田舎と同じような感じがした。
しかし、林さんが今住んでいるNY、マンハッタンの近所はまったく違う。
自然の音はほとんどなく、朝は、消防車、救急車、パトカーのサイレン、車の警報装置の音などのけたたましい音で起こされる。
初めてNYに来た頃、あまりにサイレンの音がうるさいので、近所のCDショップに行き、虫の声の音楽を買い求めたほどだった。
そのCDをかけているとき、丁度日本の友達から電話があり、
「どう、少し落ち着いた?あれ?林さん、マンハッタンにいるんだよね」
「そうですよ」
「郊外じゃないんでしょ」
「マンハッタンですよ」
「電話から虫の声が聞こえてくるけど」
「田舎が懐かしくて、虫の声のCDを聞いているんですよ」
「ああそうなんだ」
なんて話をしたこともあった。
台湾の村では、食べ物はほとんど自給自足だった。
人はみんな自然と一緒に過ごしていたのだ。
教育に熱心な面もなく、義務教育がなければ、林さんはきっと学校には行っていなかっただろうし、親たちも、子どもたちは自分たちより少しいい生活ができればいい、くらいにしか思っていなかったのではないかと林さんは振り返る。
林さんは、今は二人の子どもの父親だ。
田舎の小さな村で育った林さんの子どもたちは、NYで生まれ、今は現地の公立学校に通っている。
自分の学校での生活はいい加減なものだったので、子どもたちはそれではダメだと思った林さんは、彼の長男がキンダーガーデン(日本で言う幼稚園年長。アメリカの学校制度ではここからが日本で言う小学校にあたるエレメンタリースクールが始まる感じで、私立校や公立のギフテッドクラス《勉強や芸術に優れていると思われる子どもの特別クラス》を目指す子はたいていここで受験をする)に行く年齢になったときには、NYでも優秀といわれている、とあるキンダーガーデンを受験させようと思った。
そこの受験方法は、最初に心理学の先生によるIQテストがあり、その結果が98以上でなければ、次の段階に進むことが出来ない。
長男はそのテストでほんの少し及ばず、第一段階で落ちてしまった。
彼はNYで生まれたものの、4歳までは日本に滞在している方が長かった。
その彼が、始めてNYのプリ・キンダーガーデン(日本で言う幼稚園年中)に入ったのはテストの2カ月前。
それで突然英語でテストというのも無理な話ではあったのだが…。(次回に続く)
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名古屋市出身。血液型O型。東京・名古屋・大阪で深夜ラジオのパーソナリティーを皮切りに個性的なキャラクターでテレビ番組に登場し、その後エッセー、脚本、作詞、歌手、小説等ジャンルを超えて幅広く活躍。1996年に長男誕生後、ニューヨークにで11年余り生活。2007年に日本に帰国。
主な著書に、「子どもがのびのび育つ理由」(2008年4月 マガジンハウス)、(対談集)「頑張りのつぼ」(05年7月 角川書店)…ニューヨークで活躍する日本人8人の方との書き下ろし対談集(宮本亜門・千住博・宮本やこ・野村尚宏・平久保仲人・河崎克彦・高橋克明・小池良介)、(翻訳本)「こどもを守る101の方法」(06年7月 ビジネス社)などがある。