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09月24日朝日新聞デジタル朝刊記事一覧へ(朝5時更新)

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ひらく日本の大学

面倒見のいい大学は? -ST比(学生数/教員数)ときめ細かい教育-

大学の教育の「質」を考える時、参考になる数値の一つは教員1人あたりの学生の割合(ST比)です。各大学のST比と、そこで行われている教育の間には、どんな関係があるのでしょうか。朝日新聞と河合塾の共同調査「ひらく 日本の大学」の結果から、具体的に見ていきましょう。

ST比と教育のかかわりを探る

 ST比は、教員1人あたりの学生の割合を指します。Student(学生)とTeacher(教員)の頭文字を取って、その比率を計算するという意味で、教育環境を測る指標の一つです。

 大学に最低限必要な教員数は、文部科学省が大学設置基準で学部系統ごとに決めています。実験や実習など、研究指導を伴う分野ではより多くの教員が必要とされ、経済学部や文学部などより理学部や工学部などに多くの教員を置くことが求められています。ただ、実際には各大学が最低基準以上の教員を配置しているため、大学によってST比に開きがあり、特に社会科学系や人文科学系の学部はその幅が大きいのです。

 ST比が低い大学は1人の教員が受け持つ学生数が少なく、少人数教育がしやすい環境にあります。では、そうした大学で実際にどのような教育が行われているのでしょうか。今回の調査は、そんな疑問から出発しました。ST比の算出には、各学部に所属する教員のほか、同じ大学の他学部や大学院に所属しながら授業をしている「兼任者」も加えた教員数を使いました。

大学教育に工夫さまざま

 少人数教育の特徴の一つは「面倒見の良さ」です。では、特定の大学の面倒見がいいかどうか、どのように判断すればいいのでしょうか。

 日本の大学ではいま、課題解決型授業の導入や、リポート・試験に教員がコメントを付けて学生に返却をするなど、様々な取り組みを進めています。調査では、こうした取り組みを22項目挙げ、学部ごとに「学部全体で実施」「一部の学科で実施」「一部の教員が実施」「検討中」「検討していない」の中から選んでもらいました。

 さらに、22項目のうち、ゼミナール形式の授業を必修にするなど「きめ細かい教育」という点で共通する10項目に注目しました。回答のあった大学の実施状況をみると、「学級担任制」を学部全体で実施している大学が78%にのぼる一方、学部全体で「コメントをつけて返却」している大学は29%にとどまるなど、違いが現れました。

  • <図1>授業内容(n=2,101)

  • <図2>授業形態・指導(n=2,101)

  • <図3>仕組み(n=2,101)

  • <図4>学修指導・履修指導(n=2,101)

 10項目について「学部全体で実施」している割合を、学部系統別で一覧表にしました。各項目の平均実施率より高い場合、色掛けをしています。学部系統によって、教育の内容や方法が様々であることがうかがえます。

学部系統別取り組み実施率※22項目のうち「きめ細かい教育」という点に注目して抽出した10項目に黄色で色がけしています。
取り組み内容
卒論・卒研の必修化
専門ゼミの必修化
課題解決型授業
ポートフォリオ
研究への参加
グループによる学修・発表を取り入れた授業科目
教員、学生間の対話を取り入れた対話型授業科目
レポート・試験へのコメント返却
初年次ゼミの必修化
学級担任制の導入
専門科目を俯瞰する科目
学際系科目やテーマ型科目
サービスラーニング科目
インターンシップ
主専攻・副専攻制
教科書とシラバスの共通化
レポート・論文の書き方
新入生オリエンテーション
TAなどによる学修支援
学修方法等の指導・支援
日本語表現力向上のセンター設置
大学教育レベルの英語学修支援センター設置
文・人文 社会・国際 法・政治 経済・経営・商 教育
※国公立のみ
保健 生活科学 芸術・スポーツ科学 総合・環境・人間・情報 その他
75.7% 60.7% 17.6% 42.8% 100.0% 82.5% 95.1% 87.5% 2.7% 0.0% 96.9% 75.7% 60.0% 75.0% 75.0% 75.0%
83.8% 75.9% 48.0% 59.9% 68.2% 71.9% 64.6% 80.0% 13.7% 20.0% 80.0% 60.9% 61.1% 61.6% 78.4% 50.0%
57.1% 64.4% 53.9% 57.2% 59.1% 64.9% 70.9% 63.8% 71.2% 76.0% 80.0% 67.4% 60.0% 59.8% 70.5% 50.0%
44.3% 44.0% 24.5% 41.8% 84.1% 42.1% 53.4% 38.8% 24.7% 76.0% 47.7% 43.5% 43.3% 43.8% 39.8% 25.0%
31.2% 30.9% 24.5% 25.3% 31.8% 73.7% 73.1% 73.8% 69.9% 72.0% 89.2% 58.7% 44.4% 28.6% 50.0% 25.0%
75.0% 83.8% 77.5% 72.1% 70.5% 78.9% 79.4% 72.5% 79.5% 88.0% 75.4% 82.6% 78.9% 70.5% 83.0% 75.0%
70.7% 73.8% 70.6% 64.6% 70.5% 75.4% 68.6% 63.8% 65.8% 72.0% 66.2% 68.3% 67.8% 67.0% 70.5% 50.0%
25.0% 22.5% 15.7% 16.8% 31.8% 42.1% 34.1% 30.0% 32.9% 44.0% 33.8% 49.1% 52.2% 23.2% 18.2% 50.0%
73.1% 81.2% 64.7% 74.7% 70.5% 43.9% 48.4% 50.0% 23.3% 32.0% 36.9% 50.0% 55.6% 46.4% 64.8% 25.0%
81.0% 71.2% 63.7% 69.0% 75.0% 80.7% 81.2% 91.3% 72.6% 92.0% 93.8% 88.3% 85.6% 67.9% 80.7% 75.0%
90.2% 93.7% 93.1% 89.6% 86.4% 86.0% 78.0% 96.3% 87.7% 100.0% 95.4% 90.0% 86.7% 87.5% 94.3% 100.0%
67.4% 72.8% 73.5% 63.0% 47.7% 68.4% 69.1% 61.3% 63.0% 80.0% 66.2% 63.9% 56.7% 63.4% 70.5% 75.0%
44.5% 52.9% 38.2% 42.1% 68.2% 24.6% 31.4% 33.8% 45.2% 36.0% 40.0% 46.5% 48.9% 52.7% 43.2% 50.0%
61.4% 72.3% 64.7% 73.4% 59.1% 61.4% 76.2% 77.5% 32.9% 24.0% 32.3% 37.4% 50.0% 62.5% 73.9% 75.0%
25.2% 27.2% 25.5% 20.9% 34.1% 24.6% 19.7% 10.0% 6.8% 4.0% 7.7% 5.7% 17.8% 21.4% 20.5% 50.0%
47.4% 51.3% 27.5% 46.5% 52.3% 43.9% 51.6% 45.0% 39.7% 60.0% 61.5% 67.0% 65.6% 50.9% 55.7% 25.0%
79.3% 88.5% 77.5% 76.4% 61.4% 56.1% 71.7% 65.0% 53.4% 64.0% 64.6% 80.0% 73.3% 70.5% 81.8% 75.0%
83.8% 87.4% 76.5% 83.2% 72.7% 77.2% 87.4% 83.8% 78.1% 84.0% 84.6% 87.4% 86.7% 78.6% 90.9% 100.0%
53.1% 50.8% 53.9% 55.6% 77.3% 93.0% 89.7% 80.0% 46.6% 88.0% 73.8% 47.0% 53.3% 60.7% 67.0% 100.0%
50.2% 54.5% 60.8% 54.9% 54.5% 78.9% 78.0% 52.5% 49.3% 64.0% 72.3% 57.4% 63.3% 54.5% 56.8% 50.0%
16.2% 15.2% 13.7% 19.5% 4.5% 15.8% 13.5% 6.3% 1.4% 12.0% 12.3% 10.0% 18.9% 11.6% 19.3% 0.0%
31.9% 31.9% 30.4% 30.0% 18.2% 33.3% 37.7% 21.3% 15.1% 16.0% 20.0% 18.7% 26.7% 21.4% 28.4% 0.0%

ST比低いほど、教育はきめ細かく

 学部ごとに大学の回答を分析したところ、社会科学系(経済・経営・商・法・政治・社会・国際)では、ST比が低いほど、こうした「きめ細かい教育」が実施されていることが分かりました。

 例えば、卒業論文や卒業研究は、教員が指導や助言をしながら評価をする必要があり、指導する学生の数に応じて教員の負担が高まります。卒論・卒研を必修としているかを聞くと、ST比が45以上の学部では「学部全体で実施」は25%しかありませんでした。ところが、ST比が低くなると、反比例するように実施している学部の割合が高くなります。ST比30以上45未満の学部だと40%、20以上30未満だと51%、20未満だと62%でした。

 学生自身が問題を設定し、グループワークなどを通じて解決策を考える「課題解決型の授業」、リポートや成績、学修過程などを記録する「『ポートフォリオ』の導入」、「専門教育でのゼミナール形式の授業の必修化」も、ほぼ同様の傾向でした。一方、10項目のなかで「研究への参加」や「リポート・試験にコメントをつけて返却」は、ST比による違いがあまり見られませんでした。

  • <図1>卒業論文・卒業研究の必修化

  • <図2>専門ゼミの必修化

  • <図3>課題解決型授業

  • <図4>ポートフォリオ

 ST比と「きめ細かい指導」の関係は、文学部など人文科学系の学部でも、同じような結果が出ました。ただ、理系学部ではみられませんでした。要因としては、理系ではST比のばらつきが小さいことや、研究室単位での教育が重視され、「学部全体で実施」という質問の設定がなじみにくかったこと、などが考えられます。

「教育のきめ細かさ」得点化したら…

 「きめ細かい教育」を表す10項目の実施状況を回答した学部数は2090学部。項目ごとの回答を、「学部全体で実施」を3点、「一部の学科で実施」を2点、「一部の教員で実施」を1点、それ以外を0点として、得点化してみました。「少人数得点」とでも言いましょうか。10項目すべてに「学部全体で実施」と回答した場合、30点満点が上限となります。

少人数得点(全系統・全大学)ヒストグラム

 「少人数得点」を横軸に、その得点の学部が全体に占める割合を縦軸にとって、グラフにしました。「少人数得点」が22~24点に全体の22%の学部(460学部)が集中し最も多く、ついで19‐21点に19%、397学部、25~27点に18%、381学部があてはまりました。また、満点の30点になった学部は82学部ありました。

東京23区は得点層低め

 「きめ細かい教育」を現す10項目の実施状況を回答した、社会科学系学部は計586ありました。これらの学部に注目して「きめ細かさ得点」の分布状況を見てみましょう。

少人数得点(社会科学系)ヒストグラム

 10項目すべてを「学部全体で実施」と答え、30点満点となったのは12大学の13学部でした。ただ、最も集中したのは16~18点、19~21点の層で、それぞれ111学部、105学部ありました。理系などを含めた全学部の平均と比べると、低い傾向です。

 きめ細かく教育してくれる大学がどんな地域にあるのかを調べるため、586学部のうち、東京23区にある123学部の分布も重ねてみました。

 社会科学系全体と比べると、グラフ全体が左側に寄っていることが分かります。最も集中している得点層は13~15点です。反対に言えば、きめ細かい教育に取り組んでいる学部は、東京23区の外に多くあることになります。

 理由の一つとして考えられるのは、東京23区に大規模な大学が集中していることです。この地域にある大学に、全国の18%の学部学生が集中しています。学生数が多い分、ST比も高くなりがちで、きめ細かい教育に手が回りにくい事情がうかがえます。

 「大学サーチくん」では、2017年度「ひらく 日本の大学」調査にご回答いただいた664大学について、情報を検索することができます。未回答の大学については検索できませんので、ご了承ください。回答大学一覧はこちら

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