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トピックス

朝日新聞×河合塾 共同調査「ひらく 日本の大学」

入試の学部・学科「大括り化」で転機 金子元久(かねこもとひさ)・筑波大教授

今回の調査結果で目立つのは、大学入試のあり方に変化の兆しが見えることだ。特に入試の形態・回数を減らすという回答が、国立で53%、公立で38%、私立で35%を占めた。増加させるという回答(2割弱)を大きく上回る。この傾向は、AO入試や推薦入試など、入試の多様化による教職員の負担が限界にきている一方で、学生の基礎学力の不足など負の側面も大きくなっていることを反映している。

さらに注目すべきなのは、学部、学科など、入試を行う単位については「大括(くく)り」化をめざすという回答が、国立で63%、私立でも39%に達している点である。一方で、明確に「細分化の方向」という回答は1割程度にすぎない。これは最近の受験生に、18歳の時点で細かく分かれた中から自分の専門分野を選ばせることに基本的な無理がある、という点が認識されてきたからであろう。現在の入試区分は、大学の組織が教員の専門領域によって決められ、そこに学生定員が配分される、という大学の側の論理の結果にすぎない。

しかも、産業構造が急速に変化し、職業が多様化する中で、大学入学時に将来の職業を見越して学科選択をすることは、さらに難しくなっている。比較的大括りの入学単位をとっている東京大が学生に実施している調査でも、入学時に「進学する学部・学科を決めていなかった」という学生は1990年の24%から、2010年の43%へと倍増している。

これは、高校と大学との接続にいま、大きな転機が来ていることを示す。80年代後半から現在まで、高校では学習の課程が多様化され、大学入試ではAO入試や推薦入試などが政策的にも推奨された。さらに18歳人口の減少に伴って、学生確保の手段として入試の形態や回数が増えてきたことも事実だ。それが高校における学習意欲の拡散を生み、大学自身に跳ね返ってきている。

将来に向けては、高校教育において基本的な学力を確保するとともに、学生は大学の中で自律的な学習を通じて自ら考え、自分の将来を選択していく体制が必要だ。それを可能とするあり方が求められる。そのような意識が調査結果にも反映しているのではないか。

しかし、たとえば入試の大括り化については、大学の内部の調整が可否を握る。高校卒業までに確保するべき基礎的な学力とは何かについても議論は始まっていない。しかし諸悪の根源のように言われた大学入試の改革を、高校と大学の新しいあり方への転換に結びつけるチャンスは生じているといえよう。